希少なナローゲージ「四日市あすなろう鉄道」の知られざる魅力とは?

2020.10.30

田舎やのんびり日帰り取材が多いスローライター 松本光範

全国に3路線しかない、「ナローゲージ」と呼ばれる狭いレール幅の鉄道。そのひとつが四日市市を走る「四日市あすなろう鉄道」(以下、「あすなろう鉄道」)です。主に地域の人たちの生活の足として親しまれていますが、希少価値や周辺環境の魅力もあり、年々ファンが増加中。どんな魅力があるのか。「あすなろう鉄道」に乗ってみました。※記事中の価格は特記以外は税込み

<Index>
・ナローゲージ「あすなろう鉄道」ってどんな鉄道?
・「あすなろう鉄道」の魅力を教えて!
・「あすなろう鉄道」をもっと楽しもう!
・一緒に楽しみたい周辺グルメもお忘れなく
・三重県内を走るほかのローカル路線にも乗ってみよう!

ナローゲージ「あすなろう鉄道」ってどんな鉄道?

四日市市を走る「あすなろう鉄道」は、もとは近畿日本鉄道株式会社(以下、近鉄)が運営していた「内部(うつべ)線」と「八王子(はちおうじ)線」のこと。一時は廃線の危機にありましたが、地元の人たちの強い要望を受けて、路線を存続させるため、近鉄と四日市市の共同出資によって2015年に誕生した鉄道です。ちなみに「あすなろう」には、希望ある未来(明日)と、ナローゲージの〝ナロー〟が含まれていて、市民のみんなとともに育てていく路線という思いが込められています。

始発駅は「あすなろう四日市駅」。四日市市の中心にあり、近鉄の路線から乗り換えることができます。

路線は「あすなろう四日市駅」~「内部駅」の内部線と「日永(ひなが)駅」から「西日野(にしひの)駅」の八王子線の2路線で、運賃はご覧のとおり。


「あすなろう鉄道」の特徴のひとつがナローゲージ。レール幅が国際的な標準の1,435mm未満の鉄道のことをナローゲージと呼びます。さらに日本では、JR在来線の標準的なレール幅1,067mmよりも狭い、幅762mmの鉄道を「特殊狭軌(とくしゅきょうき)」と呼び、「あすなろう鉄道」もそのひとつ。昔は全国にたくさんありましたが、現在では、富山県に1つと、三重県の「三岐鉄道北勢線(さんぎてつどうほくせいせん)」と、この「あすなろう鉄道」の3路線のみとなっています。

「日永駅」には実際に使われていた台車が展示されています。標準幅のレールと並んでいるので、比較すると狭いことがよくわかりますね。

車両も路面電車のようなかわいらしいフォルムでかなりコンパクトでした。

「あすなろう鉄道」の魅力を教えて!

ナローゲージについては簡単に触れましたが、実際に「あすなろう鉄道」にはどんな魅力があるのでしょう。四日市あすなろう鉄道株式会社 鉄道営業部 運輸課 運輸管理所長の川村 義男(かわむら よしお)さんにお話を聞きました。

1981年に近鉄に入社後、駅員や運転士、助役なども務められた川村さん

◇「あすなろう鉄道」の鉄道としての魅力を教えてください
川村さん「全国に3路線しか残っていないナローゲージとしての希少価値ですね。場所によっては民家の軒先をかすめるようなところも通過するので、鎌倉方面を走る江ノ電のようなローカルな雰囲気を味わっていただくことができます。特に『日永駅』は、日本で唯一のナローゲージの分岐駅。車両が並ぶ姿はフォトスポットとしても人気ですよ。
もちろん、生活に密着した鉄道としても重宝されています。主な利用は通学や通勤。1日平均7000人のお客様に利用いただいています。この鉄道があったことで建設された学校や団地などもあるんですよ」

「内部線」(左)と「八王子線」(右)が乗り入れる「日永駅」

◇路線や駅舎には懐かしさを感じますが、車両や車内は新しく快適ですね
川村さん「2015年に『あすなろう鉄道』として運行を始めて以降、1年に1編成ずつ、車体のデザインを一般公募で決まった『なろうグリーン』と『なろうブルー』にリニューアルしてきました。さらに、少しでも快適に乗車してもらえるよう、車内も対面式から独立型のシートに変更もしたんです。現在はすべて新しくなっています」

広くはないものの、シート一つひとつが独立していて窮屈(きゅうくつ)さを感じさせない車内

◇沿線には古い建物が多い印象でした。歴史的な魅力もありますね
川村さん「『内部線』は旧東海道と並行して走っているので名所旧跡が多く、古い民家が並ぶ『浜田の町並み』や、旧東海道と旧伊勢街道の分岐点だった『日永の追分(おいわけ)』などを見ることができます。八王子線では『西日野駅』周辺の四郷(よごう)地区に、幕末から明治にかけて栄えた製糸産業の建造物が現存。なかでも大正時代に四郷村役場として建てられた建物を生かした『四郷郷土資料館』は、レトロ建築として見ごたえがありますよ。『1dayフリーきっぷ』(おとな550円、こども280円)を利用してハイキングを楽しむ人も多いです」

趣のある連子格子(れんじこうし)の民家が立ち並ぶ「あすなろう四日市駅」の近くの街並み
伊勢神宮の内宮から移建(いけん)した立派な鳥居が立つ「日永の追分」
四日市市指定有形文化財に指定されている「四郷郷土資料館」。木造2階建てで現在は1階のみ毎週土曜日に一般開放

「あすなろう鉄道」をもっと楽しもう!

実際に「あすなろう鉄道」に乗ってみて感じたのは、レトロ感と新しさのほどよいバランス。木造の駅舎や、大きなモーター音、車輪の振動などはレトロさを感じさせますが、車内やシートは新しくて快適です。

◇ほかにも「あすなろう鉄道」でチェックしておくべきポイントはありますか?
川村さん「これからのシーズンは、例年11月~翌年2月頃まで、17:00以降のみ運行しているイルミネーション列車がオススメです。2019年から、ゴールド系の新色を追加して、ブルー系と合わせて2パターンの車両で運行しています。運行ダイヤは当社ホームページ等で発表するのでチェックしてください」

(写真提供:あすなろう鉄道)

川村さん「2019年より運行している『シースルー列車』も人気です。床の一部がガラスになっていて、車輪が動く様子や、ナローゲージの分岐点を上から眺めることができます」

シースルーの床(163号車にのみ設置。シースルー列車の運行は毎日変わるため確認を)

川村さん「地域の人と、街や鉄道を楽しむイベントも開催しています。2020年7月には沿線住民の皆さまが中心となって企画してくださった『わくわく真夏のカブトムシ列車』を開催。列車に乗って指定の場所へ行きカブトムシの採取体験をしたり、スタンプラリーで駅を巡ったりと、大盛況でした」

◇今後の「あすなろう鉄道」の展望をお聞かせください
川村さん「鉄道の存続には、沿線住民の方々や四日市市民の方々をはじめ、大勢のご協力があることを忘れてはならないと思います。そのため第一は、通勤・通学の足である鉄道を残していくため、“安全・安心輸送の提供”という思いで運営に携わっていくこと。この思いを土台として、四日市市とイベントなどの連携、アピールを積極的に行い、乗車いただいた方々に『乗ってよかった』『遊びに来てよかった』と、言っていただける鉄道を目指していきたいと考えています」

鉄道グッズも充実

「あすなろう鉄道」では「あすなろう四日市駅」改札内の横にグッズのショーケースを設置。列車の待ち時間などに、興味深くケースをのぞきこんでいる人も多いそうですよ。その中から、川村さんオススメの3アイテムをご紹介します。

スマホスタンド800円(写真奥)
川村さん「丈夫なアクリル製。イラストは両面に描かれているので『なろうブルー』と『なろうグリーン』を切り替えて楽しめます。2020年7月の発売開始から好評をいただき、初回入荷は2日ほどで売り切れました」

マグネットバー300円(同右)
川村さん「電車の全面が磁石仕様になっています。冷蔵庫やホワイトボードなどはもちろん、部屋のワンポイントとしていろいろな場所に飾ってもらえます」

こにゅうどうくんストラップ500円(同左)
川村さん「四日市市のマスコットキャラクター『こにゅうどうくん』をモチーフにしたストラップです。一つひとつ手作りで、微妙に顔が違うことから、市民の皆さまはもちろん、遠方から訪れたお客様にも好評です」

一緒に楽しみたい周辺グルメもお忘れなく

始発から終点まで乗車しても約20分。せっかくなら『1dayフリーきっぷ』を購入して、のんびり街歩きを楽しみながら、ローカル線の旅を満喫しませんか。「あすなろう鉄道」のWebサイトにも紹介されている店舗の中から、ランチや手土産を買うのにオススメの店舗をピックアップ。どこも駅チカなので、歩いて気軽に行けますよ。

洋風食堂 モンヴェール

「追分(おいわけ)駅」の目の前にある洋食店。ワイン飲み放題の「ワイン列車モンヴェール号」を運行したり、駅弁ならぬ駅前弁「駅前ナロー弁当」を作って販売したりと、「あすなろう鉄道」を応援し、地元を盛り上げるためにさまざまな取り組みを行っています。
ハンバーグやクリームコロッケ、オムライス、など洋食の定番メニューだけでなく、夜はオードブルやワインを楽しめるビストロにも。特に、「完熟アボカドデミ山葵ハンバーグ」1,250円など、ハンバーグの種類が豊富で好評です。もちろん、四日市市名物のトンテキも味わえます。

駅前ナロー弁当900円
こちらが「あすなろう鉄道」を応援するために2012年に誕生したお弁当。ボリュームたっぷりの自家製ハンバーグは、てりやきソースとワサビとで味わうのがポイントです。しっかりとした肉感と甘味のあるソース、後口サッパリのワサビは好相性。販売はランチタイムのテイクアウトのみ。

ナロー弁当を考案したオーナーシェフ・青山 友松(あおやま ともまつ)さんに、「あすなろう鉄道」について、お話を聞きました。
青山さん「子どもや学生、若い世代のためにも、活気のある鉄道として『あすなろう鉄道』を残していかないといけないという思いを持っています。最近では『西日野駅』にロータリーができるなど、開発も進んで便利になっているので、もっと多くの人に乗ってほしいですね」

BROOK CAFE&ZAKKA(ブルック カフェ アンド ザッカ)

「赤堀(あかほり)駅」から徒歩10分。老舗材木店が手がける、カフェと雑貨のショップ。地域の木材を知ってもらうアンテナショップとしての役割も担っていて、三重県産のスギやヒノキでリノベーションしたオシャレな店舗は、入った瞬間に広がる木の香りに癒やされます。また、料理にも「有限会社四日市酪農」のクリームや鈴鹿市で採れた卵、亀山市にある「有限会社小林ファーム」の豚肉など、近隣の食材を積極的に使用。夜10時まで空いている夜お茶ができるカフェとしても地元の人に人気。もちろんディナーも充実しています。

塩キャラメルのフレンチトースト 810円(税別)
自家製の塩キャラメルソースとホイップクリームは、塩気と甘味、コクのバランスが抜群。鈴鹿市産の赤玉卵と「有限会社四日市酪農」のヨーグルトを使った卵液が、厚めにカットしたバゲットにしっかり染み込み、ジューシーで柔らかな食感に仕上がっています。お店でブレンドしたコーヒー500円(税別)との相性も抜群です。

雑貨スペースには、地元の作家の作品など多彩なアイテムが並びます。特に人気があるのは、「四日市萬古焼(よっかいちばんこやき)」の食器。カラーバリエーションも豊富で、お店限定カラーなどもあります。また、木材を生かしたマルチボードなども販売しています。

阿部製パン所

「追分駅」から徒歩5分。県道103号沿いにあり、ひっきりなしにお客さんが訪れる人気のベーカリー。「基本に忠実が一番」と話す店主の阿部 崇志(あべ たかし)さんが作るパンは、気軽に買える価格帯ながら、ボリュームもしっかり。なかでも湯種(ゆだね)を使った食パンは予約しないと買えないほどの人気です。

お客さんが3人も入ればいっぱいの店内には、毎日約60種類ほどのパンがズラリ。阿部さんがフル回転で、常に新しいパンを焼いています。

あんぱん こしあん・粒あん各90円(写真手前)
パンドゥミ 1個30円(同奥左)
クロワッサン 170円(同奥右)

定番人気のあんぱんは、小ぶりながら大福かと思うほど中はあんでギッシリ。小豆の風味を感じる自然な甘さも魅力です。クロワッサンは発酵バターをたっぷりと使用。ふんわりサクサクとした食感の奥から濃厚なバターの風味が広がります。

三重県内を走るほかのローカル路線にも乗ってみよう!

今回は「あすなろう鉄道」を中心にご紹介しましたが、三重県にはまだまだ魅力あるローカル線がたくさん。ハシゴするもよし、観光に合わせて路線を選ぶもよし。ぜひいろいろなエリアの路線も乗りに行ってみてください。

三岐鉄道(さんぎてつどう)
四日市市の「近鉄富田(きんてつとみだ)駅」からいなべ市の「西藤原(にしふじわら)駅」までを結ぶ「三岐線」と、「西桑名(にしくわな)駅」~「阿下喜(あげき)駅」までを結ぶ「北勢線」の2路線を運行。「三岐線」は「丹生川(にゅうがわ)駅」にある貨物鉄道博物館が人気です。「北勢線」は「あすなろう鉄道」と同じくナローゲージで、距離が最も長いことから「日本最長のナローゲージ」として鉄道ファンに愛されています。また、ねじり橋やめがね橋といったフォトスポットも人気です。

「近鉄富田駅」~「西藤原駅」を走る「三岐線」(写真提供:三岐鉄道)
「西桑名駅」~「阿下喜駅」までを結ぶ「北勢線」(写真提供:三岐鉄道)

伊賀鉄道(いがてつどう)
JR関西本線と連絡する「伊賀上野(いがうえの)駅」から、近鉄大阪線と連絡する「伊賀神戸(いがかんべ)駅」までを結ぶ路線。2009年に導入された松本零士(まつもと れいじ)氏デザインのラッピング列車「忍者列車」が話題です。

(写真提供:伊賀鉄道)©松本零士/零時社

「銀河鉄道999」などで知られる漫画家・松本零士氏がデザインした忍者列車。カラーは青、ピンク、緑の3編成が走っています。

伊勢鉄道
「河原田(かわらだ)駅」から「津(つ)駅」を結ぶ路線。途中には「神戸公園(かんべこうえん)」や「伊奈冨神社(いのうじんじゃ)」などの観光名所があります。なかでも、鈴鹿サーキットの最寄り駅、「鈴鹿サーキット稲生(いのう)駅」は、F1などイベントの際には多くの乗客が利用します。道中はカーブが少なく、特急や快速では時速100kmを超える区間もあるなどスピードが速いことでも知られています。

(写真提供:伊勢鉄道)

養老鉄道
三重県の「桑名(くわな)駅」から岐阜県の「揖斐(いび)駅」まで、県をまたいで運行。2019年に全線開通100周年を迎えた、歴史ある鉄道です。途中には、「多度(たど)駅」や、「養老(ようろう)駅」、「大垣(おおがき)駅」など、史跡や観光名所への最寄り駅も豊富。沿線にはサイクリングロードも多く、いくつかの駅でレンタサイクルができたり、自転車を持ち込めたりするサイクルトレインも運行しています。

(写真提供:養老鉄道)

今回は「あすなろう鉄道」を中心に、三重県のローカル線をご紹介しました。列車に乗ることで感じる土地の景色や空気感には、独特の味わいがあります。その路線でしか行くことができない場所を訪れたり、昔乗っていた電車とどこか似ているなぁと感じたり…。そんなワクワク感や郷愁を味わいたいなら、ローカル線はオススメ。ぜひ、一度乗ってみてください。

掲載情報は、すべて2020年9月時点のものです

<今回の取材先はコチラ>
四日市あすなろう鉄道株式会社
住所:四日市市安島1-1-60
電話:059-351-1860
https://yar.co.jp/
洋風食堂 モンヴェール
住所:四日市市追分3-4-12
※あすなろう鉄道追分駅から徒歩すぐ
電話:059-348-1665
営業時間:11:30~14:30(LO14:00)、18:00~22:00(LO21:00)
※現在夜は17:30~20:00(LO20:00)
定休日:月、第1・3火曜日
BROOK CAFE&ZAKKA
住所:四日市市城西町4-27
※あすなろう鉄道赤堀駅から徒歩10分
電話: 059-337-8074
営業時間:11:00~22:00(LO21:00)
定休日:水曜日
https://brook-japan.com/
阿部製パン所
住所:四日市市大治田2-2-17
※あすなろう鉄道追分駅から徒歩12分
電話: 059-345-7755
営業時間:7:00~18:00
定休日:月・火曜日
三岐鉄道株式会社
住所:四日市市富田3-22-83
電話:059-364-2141
https://www.sangirail.co.jp/
伊賀鉄道株式会社
住所:伊賀市上野丸之内61-2
電話:0595-21-0863
https://www.igatetsu.co.jp/
伊勢鉄道株式会社
住所:鈴鹿市桜島町1-20
電話:059-383-2112
http://www.isetetu.co.jp/
養老鉄道株式会社
住所:岐阜県大垣市木戸町910
電話:0584-78-3400
https://www.yororailway.co.jp/

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