女性に人気!山岳信仰の聖地での〝滝行〟体験で得られたものは?

2020.9.4

おでかけ情報はおまかせ 内山真紀

三重県では、豊かな自然やそこに息づく文化、景観など、地域の魅力を活用した観光体験と、地域資源の保護や地域貢献の両立をめざすエコツアーがさかんに行われています。県内に数あるツアーの中から、名張市の「赤目四十八滝」で実施されている、暑い季節にピッタリの「滝に打たれて自分をみがくECOツアー」を体験してきました。今も山伏(やまぶし)が修行を行う神聖な場所で、滝に打たれるという貴重な体験ができるこのツアーは、女性を中心に大人気だそう。「NPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会」の広報企画担当・増田成樹(ますだ しげき)さんに案内していただきながら、大自然の中で新たな自分を発見してきました! ※記事中の価格は税込み。

<Index>
・忍者も修行したと伝わる山岳信仰の聖地「赤目四十八滝」って?
・白装束(しろしょうぞく)で、落差40メートル以上の大瀑布(だいばくふ)に打たれる!
・〝保全〟から〝共生〟へ、次の50年に向けた増田さんたちの想い
・旅の締めくくりは、やっぱり地元の名物グルメ!

忍者も修行したと伝わる山岳信仰の聖地「赤目四十八滝」って?

近鉄「赤目口駅(あかめぐちえき)」からバスで10分程。「赤目四十八滝」は、清らかな川と深い森がつくる景観美を気軽に楽しめる場所です。かつてこの地では、山にこもって修行を行う修験者(しゅげんじゃ)や忍者が修行を行っていたそうです。

「約1,300年前に、役行者(えんのぎょうじゃ)が修行を始めたと言われている赤目四十八滝。それから山岳信仰の聖地として、多くの修験者や伊賀流忍者がこの地で修行を積んだ歴史が残っています。その後、時代が流れ、明治時代に滝の名所と知られるようになり、多くの観光客が訪れるようになりました。観光名所となった現代でも、山伏が修行するなど神聖な場所であることは変わっていません」と増田さん。

そんな聖地での体験に若干緊張しつつ、集合場所「赤目ビジターセンター」内のエコツアーデスクへ。ここで受け付けをすませます。ちなみに、同センター内には2020年3月に開館した「赤目自然歴史博物館」があり、無料で見学ができます。

増田さんからツアーの詳細や注意事項の説明を受け、体験用の白装束(しろしょうぞく)とタオルを受け取ります。ツアーには、必ず動きやすい服装で参加しましょう。ズボンはトレッキング用など、動きやすく濡れても乾きやすい素材にするか、着替えを持参することをオススメします!

入山口を通り抜け、いよいよ滝に向かいます。

入山口を抜けた瞬間にヒンヤリと空気が変わるのを肌で感じ、驚きました。さらに、「ゴォー、ザー!」と力強く水が流れる音に、自然のパワーをひしひしと感じます。
室生赤目青山国定公園の中央に位置する「赤目四十八滝」は、大小さまざまな滝をつなぐ清流沿い約4kmの回遊路になっています。ところで、〝四十八〟とは仏教の言葉で〝たくさん〟という意味があるそう。実際に滝が48瀑(ばく)あるのではありません。名前が付いている滝で23、雨の後に出現するものも含めるともう少し増えるそうです。

入山口からほどなくして、「赤目五瀑(あかめごばく)」の一つ、「不動滝(ふどうたき)」が見えてきました。取材の前日に降った大雨の影響で、水量を増した滝は荒々しく迫力満点です。

回遊路を20分ほど歩いたところで川を横断します。「滝打たれ体験」の滝はここからさらに急な傾斜の山道を登った先にあり、普段立ち入る人が少なく〝幻の滝〟と呼ばれているそうです。ちなみに、増田さんの所属するNPO団体では、修行である「滝行」と、今回の自然体験とを区別して「滝打たれ体験」と呼んでいるそうです。

幻の滝をめざして、勇気を出して川を横断。油断すると足元をすくわれそうで、とても緊張しました。伊賀の忍者たちなら、流れの中にある石でも「ヒョイヒョイ」っと軽く渡るのか?! そんなことを想像するのも楽しかったです。
※取材した日は、前日の大雨の影響で川の水量が増えていましたが、普段は足元をほとんど濡らすこともなく、石の上を渡れるそうです。

川を渡り切ったら急な岩場を約15分かけて登ります。想像していたよりも険しい道ですが、ゆっくりと進んでくれるので安心です。

ついに、見えてきました! 近づくと「ゴォー!ザー!」という大きな音と共に、滝から風が吹いてきます。この風は水を下に打ちつける力で発生するものだそうで、風にのって舞い上がるミスト状の水しぶきが、登山で熱くなった体をヒンヤリと包み込んでくれました。

白装束(しろしょうぞく)で、落差40メートル以上の大瀑布(だいばくふ)に打たれる!

「滝打たれ体験」ができるのは、修験者たちからもっとも信仰を集めた大日如来(だいにちにょらい)にちなんだ「大日滝(だいにちだき)」。「密教では大日如来は宇宙の真理を表します」と、増田さん。目に見えている落差は約30メートルですが、その上にさらに約10メートルの落差があり、10階建てのビルの高さに相当するという大瀑布。「いくつかの滝の源流で、滝つぼが無いので真下まで近づくことができます」と説明してくれました。この日は特に水量が多く、会話する声も聞こえにくいほどの音がずっと響いています。


簡易の更衣室でさっそく白装束に着替え準備万端。


滝に入る前に、山道を登って乱れた呼吸を整えます。「滝に向かって腰かけ目を軽く閉じます。体の中の息をゆっくりと吐き切り、新鮮な空気を鼻から吸い込み体の中に満たしていきましょう」増田さんの指導にしたがって、ゆっくりと丁寧に呼吸します。マイナスイオンいっぱいの空気は、普段の何倍もおいしく感じることができました。


いざ、滝の中へ! この日は気温が高く、じっとしていても汗ばむ陽気にも関わらず、水は予想以上に冷たくてビックリ。増田さんのお話しでは、「水風呂などで冷たい水に慣れていないと、数秒で耐えられなくなります」とのこと。心の準備をして挑戦です。


水の冷たさと滝の勢いに一瞬怯(ひる)みながらも何とか滝へ入ることができました。滝の下に入ると打ちつける水の音以外は何も聞こえず、ただただ滝の勢いに負けないようにと無我夢中(むがむちゅう)。しばらく打たれていると、冷たさと真上から打ちつける水圧にも少し慣れ、先程教えてもらった呼吸法で心を整えるゆとりも。


ここまでの道中で体力を消耗していましたが、不思議と体がシャンとして少し元気をもらえたような気がしました。いろいろなことを考える余裕はなく、とにかく滝と向き合う時間が過ぎていきます。「何も考えずに、『滝打たれ』に挑戦する。これが、いわゆる〝無〟になるということなんです」と、増田さん。


少し慣れてきたので、もっと流れが激しい位置でトライ。頭から肩にかけて打ちつける水圧は、気を抜いたら押しつぶされそうなほどの勢いがありました。丁寧に呼吸し、気持ちを落ち着けることで、精神が鍛えられる感覚です。修験者や忍者たちは、真冬の凍(い)てつくような寒さの中で滝行を行っていたというのですから、その精神力は想像をはるかに超えています。


滝の内側には流れる水がカーテンのようになって、外界と隔てられたくぼみがありました。そこは、不思議な静寂(せいじゃく)があり何とも心地の良い空間。この体験をした人にしか味わえない時間が流れていました。滝の水量は天気などによって変わりますが、取材日は前日が大雨だったため、水量がとても増加していました。晴天が続くと水量は減るそうなので、迫力のある滝打たれを体験したいなら、雨の後がおすすめ。
流れる水の冷たさ、荒々しい滝の力強さ、その中にある静寂……。自然が与えてくれる豊かな体験に感謝して、下山します。

エコツアーの最後は、天然温泉で体を温めてほっとひと息。参加費には温泉入浴券も含まれているので、赤目四十八滝入り口からすぐの「赤目温泉 隠れの湯 対泉閣(たいせんかく)」と、車で5分ほどのところにある「湯元 赤目 山水園(さんすいえん)」の2ヵ所から、好きな方を選んで入浴できます。この日は、「赤目温泉 隠れの湯 対泉閣」に入浴させてもらいました。入浴可能な時間については、直接問い合わせを。

写真提供:赤目温泉 隠れの湯 対泉閣/男性露天風呂「半蔵の湯」

写真提供:赤目温泉 隠れの湯 対泉閣/男女日替わりの大浴場「上忍の湯」

良質なアルカリ性単純温泉で、美肌の湯としても知られる「赤目温泉 隠れの湯 対泉閣」。大自然に囲まれた開放的な露天風呂と、地元産のヒノキを使った大浴場を完備しています。

私は女性露天風呂「かげろうの湯」へ。湯舟に浸かりながら目の前に広がる自然の風景を独り占めできる、贅沢(ぜいたく)な時間でした。山道を登り、冷たい滝に打たれた自分へのごほうびタイム。心身ともに癒されました。

今回、ド迫力の滝に入るのには勇気がいりましたが、自分自身の中にある〝恐怖心〟に打ち勝ち、自然の懐に飛び込むことで、頭を空っぽにするという〝無〟の時間を体験。終わった後は不思議な爽快感で気持ちも軽やかに。豊かな自然の中で充実した時間を過ごすことができました。

〝保全〟から〝共生〟へ、次の50年に向けた増田さんたちの想い

今回のツアーを案内してくださった増田さんに、ツアー実施のきっかけや、NPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会の今後の展望について伺いました。

山道の途中で増田さん(写真左)と休憩

◇「滝打たれ体験」ツアーをはじめたきっかけを教えてください。
増田さん「〝滝に打たれる〟という、非日常の体験を通して自然の一部になって、その素晴らしさを知ってもらいたいという気持ちで始めました。参加されるのは女性が多いですね。仕事や子育て、将来への不安など、いろいろな想いを抱えて、こちらにいらっしゃいます。でも、体験が終わると、皆さん表情が晴れやかになっているんですよ。勇気を出して、勢いよく流れる滝に打たれることで、『気持ちの切り替えができた』『一歩踏み出す勇気をもらえた』という声をいただきます」

写真提供:NPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会/荷担滝.新緑2019

◇NPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会の取り組みについても教えてください。
増田さん「赤目四十八滝では、国定公園としてはおそらく日本で唯一、いただいた入山料で渓谷の保全や法人の運営を行っています。また、ツアーガイド以外にも、パトロールや事故の際のレスキュー活動なども行っています」

◇自立した観光事業者として、環境保全や自然を生かしたエコツアーなどの運営を行っているんですね。
増田さん「そうです。行政からの運営補助金などに依存せず、事業収入で自立した組織運営を行う私たちの取り組みは、同じ観光事業を行うNPO法人の事業モデルにもなると自負しています。2020年は、国定公園に制定されて50年という節目の年。これまでは自然保全が第一でしたが、次の50年は『自然との共生』をテーマに取り組んでいきたいと考えています」

◇「滝打たれ体験」などのエコツアーは、まさに「自然との共生」ですね。
増田さん「自然をいかに利用し共生するかを考えていたのが、忍者や修験者です。そんな、先人たちの知恵や考え方を、エコツアーを通して伝えていきたいと思っています。さらに、大自然を五感で体験することで、その魅力や偉大さ、厳しさを知ってもらい、より身近に感じてもらえたらうれしいですね」

ガイドスタッフの中村拓海(なかむら たくみ)さん。「滝打たれ体験」をはじめ、忍者体験などさまざまなツアーのガイドを担当しています。同団体では、歴史や自然体験の魅力を次の世代へ繋げるため、若手の育成にも力を入れているそうです。

旅の締めくくりは、やっぱり地元の名物グルメ!

旅のお楽しみと言えば、名物グルメははずせません。赤目四十八滝では、滝の入山口のすぐ手前に、魅力的なお店がたくさん連なっているので、気軽に立ち寄ることができます。まずご紹介したいのが、名張市のB級グルメ「牛汁(ぎゅうじる)」。Aランクの最高級黒毛和牛「伊賀牛(いがぎゅう)」を使ったまかない料理がはじまりなのだそう。ブランド牛を気軽に味わえると観光客からも人気です。

今回、立ち寄らせてもらったのは「大日屋(だいにちや)」さん。〝おふくろの味〟を大切にした、心やすらげる料理が人気です。

かつおと昆布でとった和風だしがこだわりの「伊賀牛汁御膳(いがぎゅうじるごぜん)」(1,250円)。和風だしに伊賀牛の旨みがプラスされ、あっさりなのにコクのある牛汁。滝に打たれて心地良い疲労感のある体に染みわたります。ニンジンやしいたけなど、地元で採れる野菜もたっぷり入ってボリュームにも大満足。味噌ダレでいただく田楽も絶品です。

「牛汁もおいしいですが、隠れた名物『伊賀豚角煮』もオススメです。ゆっくりと食事を楽しんでください」と、スタッフの勝山美保(かつやま みほ)さん。

開放的なテラス席では、ペットと一緒にくつろぐことができますよ。

つづいては、ユニークなネーミングが一度聞いたら忘れられない「たまきや」さんの「へこきまんじゅう」です。休日ともなれば行列ができる人気店で、へこきまんじゅうだけを買いにくるファンもいるほど。

92歳の今も現役でお店に立つ、玉置よう子(たまき ようこ)さん。「お客さんとの会話が元気の秘訣」と、笑顔で迎えてくれました。

国産さつまいもで作った生地を忍者の形に焼き上げた「へこきまんじゅう」。さつまいもの甘さを生かした素朴な味わいは、「もうひとつ…」とついつい手が伸びるおいしさ。

写真は、さつまいも生地だけを焼き上げた「プレーン」(200円)。さつまいもは完全なペーストにはせず、あえて粒感を少し残してホクホク感をプラス。焼き立てはしっとりとした食感が楽しめ、格別のおいしさです。プレーンのほかに、粒あんが入った「金のへこき」(250円)やクリームチーズとクランベリーが入った「へこきち」(250円)など、全7種類。お土産にもピッタリです。

グルメ以外で、ぜひオススメしたいスポットが、入山口に併設された「日本サンショウウオセンター」。入山料の中に入館料が含まれているので、自由に見学することができます。入口では、オオサンショウウオをモチーフにした同館のマスコット、さんちゃんとタッキーがお出迎え。

特別天然記念物のオオサンショウウオ。ゆったりとした動きと、愛嬌(あいきょう)のある顔にいやされます。赤目四十八滝には野生のオオサンショウウオが生息していて、運が良ければ姿を見ることもできるのだとか。ちなみに、9月9日は、オオサンショウウオの日。オオサンショウウオが繁殖期に入り、活発になるのがこの時期で、さらにその姿が数字の9に似ていることから、9月9日と決まったそうです。

「滝に打たれて自分をみがくECOツアー」はいかがでしたか?三重県では、このほかにもカヤック、トレッキングなどのアクティビティや、農林漁業体験など、大自然を体験できるエコツアーがいっぱいです。「三重まるごと自然体験」(HP:https://www.taiken.pref.mie.lg.jp/)には、県内のエコツアーが多数紹介されているのでぜひチェックしてみてください。

<今回紹介した施設はコチラ>
★赤目四十八滝(管理センター)、日本サンショウウオセンター 
住所:名張市赤目町長坂861-1
電話:0595-63-3004
入山料(日本サンショウウオセンター入館料):大人500円、小中学生250円、団体割引あり
営業時間:8:30~17:00(冬期は9:00~16:30)    
定休日:12月28日~12月31日
http://akame48taki.com/

★赤目四十八滝 エコツアーデスク(赤目ビジターセンター内)
 
住所:名張市赤目町長坂671-1
電話:0595-64-2695
受付時間:9:00~17:00
料金:滝に打たれて自分をみがくECOツアー4,000円(渓谷入山料・天然温泉入浴券・傷害保険を含む)
http://www.akame48taki.com/info/14510/%e2%97%87%e2%97%86%e6%bb%9d%e3%81%ab%e6%89%93%e3%81%9f%e3%82%8c%e3%81%a6%e8%87%aa%e5%88%86%e3%82%92%e3%81%bf%e3%81%8c%e3%81%8feco%e3%83%84%e3%82%a2%e3%83%bc%e2%97%86%e2%97%87-2/
※持ち物や予約については、webサイトにて要確認

★赤目温泉 隠れの湯 対泉閣

住所:名張市赤目町長坂682
電話:0595-63-3355
営業時間(温泉):平日10:30~19:00、日・祝・休前日10:30~16:00
入浴料:大人850円、小人500円
http://www.akameonsen.com/

★大日屋

住所:名張市赤目町長坂657-3
電話:0595-63-2656
営業時間:平日10:00~16:00、土・日・祝10:00~17:00
※イベントや季節によって変更あり。詳細は電話にて要確認。
定休日:不定休
http://akame48taki.com/taberukau/gyujiru.html

★たまきや

住所:名張市赤目町長坂720-1
電話:0595-63-0113
営業時間:10:00~16:00
定休日:不定休
https://www.hekoki-fukuemon.com/

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