「Youは三重で何してる?〜三重で暮らす外国人に聞く〜 Part 1音楽家&研究者編」

2019.5.8

「日本のよさ」探し人 堀内みさ

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南北に長く、多様な自然環境を持つ三重県。かつて陸海交通の東西の結節点として、多くの人やものが行き交ったこの地では、多様な文化が脈々と受け継がれてきました。そんな土地の特性を生かし、三重県では現在、ダイバーシティ社会へ向けたさまざまな取り組みが行われています。ダイバーシティとは、日本語に訳すと多様性。性別や年齢、障害の有無、国籍や文化的背景などにかかわらず、誰もが希望を持って挑戦し、活躍できる社会をめざしています。

三重県のダイバーシティに向けた取り組みの詳細はコチラから
http://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000774643.pdf

今回は2回にわたり、三重県内に移住し、さまざまな専門分野で活躍する外国人に、三重での暮らしをうかがいます。Part1では、音楽家、研究者として働く2人をご紹介!

 

西欧との懸け橋になり、四日市をインターナショナルな街に
マリンバ奏者 トラヤノフ・ヴェスコさん

ブルガリア出身のトラヤノフ・ヴェスコさんはマリンバ奏者。2018年1月に、同じマリンバ奏者で奥さまのかおりさんの実家がある三重県四日市市に移住しました。夫妻で演奏活動を行うほか、音楽・語学教室「International Music School  SOZO」を開設し、マリンバや打楽器、さらに英語やドイツ語のレッスンも行っています。

父親がバイオリン、母親がピアノ奏者で、姉や妹も音楽家という音楽一家で育ったトラヤノフさん。高校卒業後は音楽の街として知られるドイツのデトモルトにある国立音楽大学の打楽器科で学び、その後、オーケストラの打楽器奏者として演奏活動を行ってきました。かおりさんともデトモルトで出会ったとか。

そもそもクラシック音楽の本場、ドイツから日本、しかも四日市に移住したのはなぜだったのでしょう? トラヤノフさんが話すドイツ語を訳しながら、かおりさんが答えてくれました。

◇四日市に移住したきっかけを教えてください。
トラヤノフさん「妻と知り合ったことがきっかけで移住前に3度日本を訪れ、東京、京都、沖縄などたくさんの地を旅行しました。そのとき日本はいいなと思っていたんです。ただ、具体的に住みたいと思ったのは、3度目の2016年に来日したとき。ちょうど何か変化がほしいと強く思っていた時期でした。実はそれまで12年間デトモルトで暮らしていましたが、自分にはドイツは合わないとずっと思っていたんです。妻も大学卒業を控え、次の進路を迷っていました。フランスも候補に考えましたが、そうなると2人とも一からフランス語を覚え、演奏活動を始めなければならないし、物価も高い。そこで僕が、日本での生活を試したいと提案したのです」

現在はかおりさんの実家、四日市市水沢町(すいざわちょう)に住み、近鉄四日市駅近くにある教室に通ってレッスンをする日々。コンサートも四日市国際交流センターなどで月2回ほど行っています。
トラヤノフさん「デトモルト時代から教える仕事もしていたので、生活はほとんど変わっていません。ただ、演奏活動は日本に来て増えました。ドイツではマリンバはあまりメジャーでなく、2人のコンサートも半年に1回程度でしたから」

コンサートではクラシックだけでなく、ポップスや映画音楽、日本民謡まで、幅広くさまざまなジャンルの作品を演奏しています。
かおりさん「彼は日本の曲がすごく上手なんです。美空ひばりさんの曲など、原曲を知らないのに私より情感豊かにメロディーを奏でていると感じます」
トラヤノフさん「聞いたことがないのに、弾いているうちに知っているような感覚になってくるんです。音符がシンプルでメロディーを追いやすいので、曲に入っていきやすいんですよね」

茶畑があり紅葉の名所もある水沢町が大好き!日本古来の風景に惹かれます

◇三重県について、どう思っているのでしょうか?
トラヤノフさん「自宅のある水沢町は山に近い小さな町ですが、緑が多くて大好きです。茶の産地なので茶畑が広がり、紅葉の名所『水沢もみじ谷』もあるんです。2人とも自然が好きで、大きな都会は苦手。音楽をする上でストレスは避けたいですからね。あとは、例えば、同じ四日市市にある小古曽(おごそ)町など、観光地ではない小さな町も好きです。瓦屋根の家や神社など日本古来の何気ない風景に惹かれます。昨年、両親が四日市市に遊びに来ましたが、気候や建物の違いに驚き、別の惑星に来たみたいだと言っていました。写真も6,000枚撮ったそうです」

◇今後の夢はありますか?
トラヤノフさん「演奏活動を今のように続けていきながら、教室ももっと大きくなり、生徒さんが私たちのように留学して音楽に関わっていってほしいです。西欧との懸け橋になれればいいなと思います」

昨年は台湾で、現地在住の友人とコンサートを開いた2人。今年は韓国で演奏する予定とか。
「留学中に知り合った友人が世界中にいるので、今後も一緒に何かしようと話しています。日本にも招待して、四日市市がインターナショナルな街になるといいなと思っています」。そう話すかおりさんの横で、穏やかに微笑むトラヤノフさん。「では日本に住んで正解でしたね?」と聞くと、日本語で「はい!」と元気に一言。今後の活躍が楽しみです。

 

あこがれだった先進農業への熱意で、前例のない道をひらく
先進農業研究者 呉婷婷(ウー・ティンティン)さん

環境制御システムを用いたガラス張りのハウスに整然と並ぶ、さまざまな品種のミニトマト。三重県津市にある「株式会社浅井農園」の正社員、呉婷婷さんの一日は、本社横の研究農場で栽培中のトマトをチェックすることから始まります。

浅井農園は、科学の目線でトマト栽培に取り組む研究開発型の農業カンパニー。社風もグローバルで、中国人の呉さんの他に、ベルギー、スウェーデン出身と計3人の外国人が正社員として働いています。「全社員それぞれが、1年間どんな研究目標を持って取り組むか、シーズンが始まる前に発表し、テーマを持って働いています」と呉さん。

呉さんは、世界中から採集されたさまざまな品種のトマトの溶液栽培に携わり、日々ハウス内の温度や湿度、CO2濃度をセンサーやパソコンでコントロールしながら、トマトの生育調査や品質管理を行っています。品種それぞれの収量や生育状態、味などさまざまな要素をリサーチし、生産拡大が可能な品種を選抜するのも大切な仕事。また、オランダ在住のスーパーバイザーと、パソコン上でハウスの環境を共有しながら、週1回スカイプで会議も行っています。会話はもちろん英語。積み重ねてきたキャリアを存分に生かして働いています。

◇そもそも中国出身の呉さんがなぜ三重で働いているのでしょう?
呉さん「2010年に交換留学生として三重大学で学び始めました。中国で学んでいた安徽(あんき)農業大学の修士1年のとき、先生から“三重で先進農業を学んでこい” と紹介していただいたんです。私が交換留学生の第1号でした。三重県には、農業研究所という県の機関があり、トマトやイチゴなどハウス栽培の技術研究に力を入れているんです」

◇なぜ農業を専門に?
呉さん「祖母も含め、近隣の人すべてが農家だったんです。両親もJAのような職場で働いていて、小さい頃から麦畑や田んぼを見ながら遊んでいました。大学での専門は農業機械分野の、中でもエネルギー利用工学。バイオマス(生物由来の資源)についても研究していました」

◇浅井農園との出会いは?
呉さん「当初は三重大学で学位を取得したら、安徽農業大学に戻り教師になるつもりでした。でも、学位取得後、1年間地域の中小企業をサポートする三重大学の社会連携センターで研究員として働いていたとき、浅井農園の代表、浅井雄一郎が、当時立ち上げたばかりの『うれし野アグリ』というグループ会社が手がけるプロジェクトの説明に来たのが出会いですね」

◇どんなプロジェクトだったのでしょう?
呉さん「地域のバイオマスを製油会社の工場に熱エネルギーとして供給。代わりに、そこで排出される熱や余分な蒸気を隣接するハウスの冬の暖房に活用し、トマト栽培をするという、まさにバイオマスを利用した農業のプロジェクトでした。ずっとあこがれてきた先進農業だったのですごくやりたくなったんです。浅井とも話し、ビジョンが一致したので、“インターンシップをさせてください”と直談判しました」


▲コチラが呉さんが勤務する浅井農園

気さくに何でも教えてくれる─、三重にはピュアな心を持つ人が多い気がします

こうして呉さんは、会社にとっても前例のない道を歩み出し、ほどなく浅井農園が株主を務めることになった「うれし野アグリ株式会社」でインターンシップの8カ月間を過ごします。周囲はみな三重県民。「とにかくみんな話しやすく、出身など関係なくなんでも教えてくれました。三重にはピュアな心を持つ人が多いのではないでしょうか」。そんなインターンシップ時代の体験は、その後、浅井農園の正社員となり、ほかの従業員と接するときにも役立っていると言います。

はじめて訪れた2010年以降、ずっと三重に住み続けている呉さん。旅行で日本各地を旅することも多いそうですが、「三重は本当に好き」と話します。気候がよく、食べ物も海や山の幸が豊富で、野菜も新鮮。また空港に近いなど、交通も比較的便利な点も好きな理由の一つ。中でもお気に入りは伊勢志摩の英虞湾の眺め。「内陸部の四川省の出身なので、海にはあこがれがあったんです」。自然が好きで、三重県内で山登りや海にもよく行くとか。

◇呉さんについて、中国に住むご両親はどう思っているのでしょう?
呉さん「姉が一人いて、両親の面倒を見てくれています。ちょっと寂しそうですが、自分のやりたいことを見つけたのだから応援していると言ってくれています。毎年日本に来ていて、昨夏は宮古島に連れて行きました。やはり、きれいな海が見たいので」

◇最近、ご結婚もされたとか。
呉さん「夫は日本人です。三重大学の同じ研究室で、学生時代から互いの母国語を教え合っていました。おかげで卒業する頃には、ひと通りの生活用語は話せるようになりましたが、社会人になってからは、日本の常識や敬語など、社会生活に必要なことを教えてもらっています」

呉さん以後、安徽農業大学から三重大学への交換留学生の数は数十人にも上るとか。呉さんが良き先例となったのでしょう。自身の仕事について語るときのきらきらした目が印象に残りました。

「Youは三重で何してる?~三重で暮らす外国人に聞く~ Part2」は5月10日にアップ予定。次回、登場するのは、なんと外国人神主! どういった経緯で神主になったのでしょう。お楽しみに。

(掲載情報は、すべて平成31年3月時点のものです)

<今回の取材先はコチラ>
International Music School SOZO
住所:三重県四日市市鵜の森1-4-4  WAKOビル3階
TEL:080-4534-0721
http://sozo-school.com/
あさい農園
住所:三重県津市高野尾町4951
TEL:059-230-1212
http://www.asainursery.com

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