みんなの思い出の味! 伊勢市3大ソウルフードはなぜ地元民以外も懐かしいの?

2021.4.9

グルメからエンタメまで 佐野 興平

地元の人たちから長く愛されている食堂やレストランが多い伊勢市。半世紀以上、同じスタイルで営業を続けている店も多くあります。“伊勢市の3大ソウルフード”とも呼ばれるメニューが味わえる「まんぷく食堂」「喫茶モリ」「キッチンクック」は、そんな根強いファンを持つ名物食堂。お店の歴史、初めて訪れた人にもどこか懐かしさを感じさせる魅力を取材しました。※記事中の価格は税込み

<Index>
学生の多い街で世代を越えて愛されてきたソウルフード
【まんぷく食堂】初代が考案したボリューム満点のからあげ丼
【喫茶モリ】伝統の味をそのまま引き継ぐ激ウマスパゲティ、モリスパ
【キッチンクック】カレーonカレー&カツで満腹確実のドライカツカレー

学生の多い街で世代を越えて愛されてきたソウルフード

“伊勢市の3大ソウルフード”とも呼ばれ、地元の人から強い思い入れとともに愛されているのが、「まんぷく食堂」のからあげ丼、「喫茶モリ」のモリスパ、そして「キッチンクック」のドライカツカレー。この3つがなぜソウルフードと呼ばれるようになったのか、伊勢市役所の産業観光部 観光誘客課の谷川槙菜(たにがわまな)さんにお話をお聞きしました。

この3店の近くには高校や大学があり、手頃な値段でお腹いっぱいになるボリュームや、少し濃いめの味付けが、創業当時から学生たちに支持されているとのこと。「3つのお店とも創業から40年以上経っており、学生時代に通った地元の人たちが、大人になってからも足を運び、そこには現在の学生もいて…と、世代を越えて人気が受け継がれているそうです」と谷川さん。

3店舗の最寄り駅である近鉄「宇治山田(うじやまだ)」駅。今も近隣の学校に通うたくさんの学生たちが利用しています。

そして、ソウルフードという呼び方については、「地元の情報誌が2008年頃に掲載した『ソウルフード特集』に3店が取り上げられていたことが理由では」と教えてくださいました。ちなみに市役所で働く人たちもランチでよく利用しているそうで、谷川さんも今回取材したメニューはすべて食べたことがあるとのこと。さっそくお店へ行ってみましょう。

【まんぷく食堂】初代が考案したボリューム満点のからあげ丼

まずは宇治山田駅の高架下にある「うじやまだ駅前横丁」で営業している「まんぷく食堂」へ。駅からは徒歩1分というアクセスの良さです。

オープンは1975年。伊勢市では知らない人はいないと言われるほど有名です。壁には手書きメニューのほかに、お客さんが貼ったと思われるライブ告知のチラシなどがびっしり。長きにわたり、地元の人たちに愛されているのが伝わってきます。こちらにはなんと別館が。本店の隣と、斜め向かいという至近距離に2つもあります。

こちらが別館の1つ。靴を脱いで利用するくつろぎスペースとなっています。お客さんは本店で注文と支払いをすれば、好きな場所で食事をすることができるシステムです。別館はその昔、近隣の子どもたちの遊び場としても使われていたそう。

現在、お店を切り盛りしている二代目の鋤柄大平(すきがら たいへい)さんです。お店をオープンしたのは、大平さんのご両親。ちなみに右側は今も現役のお母様のパネルです。

名物メニューの「からあげ丼」が誕生したのはオープン2年後の1977年。当時、世の中でからあげがブームになっていたそうで、他の店では提供していないからあげのメニューを作ろうと、先代であるお父様が考案されたんだとか。

ニンニクやショウガなどで味付けされた、かなり大きな鶏もものからあげを食べやすいサイズにカット。玉ねぎといっしょに自家製の出汁へ入れ、しっかり煮込んで溶き卵を回しかけ、ふわふわの半熟状態で丼ぶりへ。このスタイルは昔から変わっていないそうです。

ご飯は三重県産のお米を使用。少し固めに炊いたご飯の上にのせて、最後に特製コショウをかけたら完成です。

「からあげ丼」650円。ボリューム満点です! 「ついつい量を多くしちゃうんですよね」と笑顔の鋤柄さん。このサービス精神が学生さんたちを中心に愛されてきた理由のひとつなんですね。
サラダ、赤出汁付きの定食は780円、「プチからあげ丼」580円、「プチからあげ丼」と伊勢うどんorかけうどんをセットにした「新福定食」800円、などのバリエーションもあります。

自家製出汁で煮込んだからあげ、コショウがきいた味付けの組み合わせに、ご飯がどんどん進みます。しっかりした味付けですが、意外とあっさり食べられると年配の方からの注文も多いとのこと。

鋤柄さんにも伊勢市のソウルフードについてお聞きしました。
「3店舗とも1970年代にオープンし、学生さんを中心に愛されています。大人になって、久しぶりに地元に帰ってきてどこか1店舗で食べると、ほかの店でも食べたくなるそうですよ」。懐かしの味として、地元民の記憶にしっかり刻み込まれていることを明かしてくれました。

「からあげ丼」のほかに、オリジナルの味噌を使った「みそかつ丼」など、ボリュームたっぷりなメニューがそろっている「まんぷく食堂」。今日もたくさんの人がおいしくて手頃な料理を求めて訪れています。

【喫茶モリ】伝統の味をそのまま引き継ぐ激ウマスパゲティ、モリスパ

今回の3店舗の中でもっとも歴史が古い1970年創業の「喫茶モリ」。50年以上も変わらないメニューで支持され続けている老舗です。

宇治山田駅から徒歩3分ほど。お店は建物の2階なので、階段手前に置いてある看板を目印に、そのまま階段を上がっていきます。

窓が大きく開放的な店内

こちらが壁に掲示されているメニュー表。定番の喫茶メニューが並んでいます。中でも特に人気が高いのが「モリスパ」。正式名称は「モリ特製スパゲッティ」。その下の大盛りが店名にちなんで「大モリ」になっているのもお茶目ですね。

あらかじめ茹でたスパゲティをケチャップ風味の自家製ソースとからめて鉄板へ。温まったら、そこに卵を回し入れ、ちょっと固めの半熟になったら、ソーセージやマッシュルームなどをトッピング。

シメにチーズを振りかけると、「モリスパ」こと「モリ特製スパゲッティ」が完成。山盛り極太麺のナポリタンが、食欲をそそります。

通常サイズは580円。写真は大モリ700円。創業者はこのメニューを提供したいからという理由でお店を始めたそう。15年前ほどから店を引き継いだ濱口元紀(はまぐち もとき)さんは、先代のレシピを忠実に守っていて「同じスタイルでこれからも残していきたい」と話してくれました。濱口さん自身も、高校生の頃からこちらのお店によく通っていたとのことです。

鉄板に載っているので、スパゲッティはいつまでも熱々! モチッとした麺にケチャップの甘み、旨味のあるソース、そして玉子がしっかりと絡んだ三位一体の美味しさ。オーダー率はなんと95%以上とのことで、取材時には来店したすべてのお客さんが、この「モリスパ」をオーダーしていました。

【キッチンクック】カレーonカレー&カツで満腹確実のドライカツカレー

ボリュームたっぷりの洋食メニューで、多くの人の心を鷲掴(わしづか)みにしている「キッチンクック」。創業は1977年です。

宇治山田駅から徒歩3分ほどと、こちらのお店も学校帰りの学生たちが立ち寄りやすい立地ですね。

なんとも味わい深い雰囲気の店内は、カウンターとテーブルが3つ。厨房ではご主人の坂口五次(さかぐち いつじ)さんご夫婦、そして二代目となる息子の竜也(たつや)さんが忙しそうに働いています。

壁にかけられたメニューにも、レトロな雰囲気があふれています。さまざまな定食メニューが充実しているほか、ハムエッグやウインナーなど単品でのオーダーも可能。「ドライカツカレー」以外ではスパゲティやピラフが人気だそうです。

創業時に、「カツカレーがあるなら、ドライカレーにカツを載せてもいいんじゃないか」という坂口さんのアイデアから生まれた「ドライカツカレー」。具材は豚肉とタマネギなど細かく刻んだ野菜。カレーパウダーを使って豪快にフライパンをあおって調理していると、美味しそうなカレーの香りが広がります。

「ドライカツカレー」900円。なんと売上の7割を占めることもあるほどの人気メニュー。昨年からテイクアウトもスタートしているので、持ち帰ってお家で楽しむこともできるそうです。大盛り1,000円も。

ドライカレーの上にかけるカレールウは、スパイスと小麦粉から作る昔ながらのレシピで、牛肉や野菜などを2日間煮込んで完成させています。スパイシーなドライカレーに旨味たっぷりのルウ、揚げたてのロースカツのコラボがたまりません。お店には駐車場が8台分用意されているので、遠方からでも来店しやすいのもうれしいですね。

今回、取材したどのお店にも、常連らしいお客さんがひっきりなしに訪れていました。お店の人いわく、親子三代で来店するお客さんもいらっしゃるそうです。青春時代に通い詰めたお店に愛着を持ち、子どもや孫世代にも受け継いでいく伊勢市民の思いと、創業時から変わらないスタイルでそれに応えるお店とが作り出すステキな関係性。そんな雰囲気が、地元民以外にも、訪れたときにどこかほっこりとした懐かしさを感じさせてくれるのではないでしょうか。

取材帰りに通りかかった宇治山田駅には元気な学生たちがいっぱいでした。これからも、彼らがこのソウルフードをずっと未来へ伝えていってくれることになるでしょう。伊勢市を訪れた際は、地元民が愛してやまない名物食堂で、ノスタルジックな魅力を満喫してみませんか。

<今回の取材先はこちら>
まんぷく食堂
住所:伊勢市岩淵2-2-18
電話:0596-24-7976
営業時間:11:00~20:30
定休日:不定休

喫茶モリ
住所:伊勢市岩渕1-15-10 モリビル2F
電話:0596-25-1729
営業時間:10:00~18:50L.O.※土曜・日曜・祝日、大型連休は15:00~17:00の間 中休み
定休日:月曜、年末年始

キッチンクック
住所:伊勢市岩淵2-7-29
電話:0596-24-5972
営業時間:11:00~15:00、17:00~22:30
定休日:水曜

■取材協力
伊勢市役所 伊勢市産業観光部 観光誘客課 観光誘客係
住所:伊勢市岩淵1-7-29 東館3F
電話:0596-21-5565