本格派パティスリーが続々オープン!個性が光るスペシャリテの秘密とは!?第3回

2020.12.18

スイーツコーディネーター 松本由紀子

ここ数年、関東や関西で修業を重ねたパティシエが地元の三重県で自分の店をオープンさせるUターン開業などもあり、三重県のパティスリー業界が盛り上がりをみせています。修業先で得た知識や技術と、三重県の魅力をいかにマリアージュさせるか!? 三重県のパティスリー業界を牽引(けんいん)する4名のパティシエに、それぞれの個性あふれるお菓子のヒミツや今後の展望を伺いました。4回にわたってお届けしています。今回は第3回目。(※記事中の価格は税別)

第1回
大阪の名店「なかたに亭」などで研鑽(けんさん)を積んだ実力派「パティスリー アンスピラシオン」
第2回
「神戸北野ホテル」やフランスで修業を重ねた新進気鋭(しんしんきえい)「パティスリー アノ」
第4回
カリスマパティシエ辻口博啓(つじぐち ひろのぶ)さんが展開!アクアイグニス内「コンフィチュール アッシュ」

女性ショコラティエのパイオニア!ショコラ専門店「フェーヴドカカオ」

桑名市にあるショコラの専門店「フェーヴドカカオ」。一見してチョコレート屋さんと分かるダークブラウンの外観。ドアの横には、チョコレートをデザインした板もはめこまれています。

オーナーショコラティエールの日下部真弓(くさかべ まゆみ)さんは、桑名市生まれ桑名市育ち。名古屋の美大を卒業後、アパレル会社に入社。退社後、まず販売員としてお菓子の世界に入り、2010年に自宅の車庫を改装し、「フェーヴドカカオ」を開業したという異色の経歴の持ち主です。
三重県はもとより全国的に見ても、女性一人でお店を経営するスタイル、しかもショコラに特化した専門店としてはパイオニア的存在です。

開業のきっかけは? なぜこのスタイルで?
日下部さん「会社員時代、ひとりで食べ歩きをしているうちに、フランス菓子やショコラティエの重鎮(じゅうちん)とよばれる方々と親しくなり、自分が作った焼き菓子やチョコレートを食べてもらうようになり、おいしいと言ってもらえるようになったことが始まりです」

「オープン当時は、ショコラだけに特化したお店として営業していくのはなかなか難しかったので、焼き菓子なども作るように。最初はショコラに特化した焼き菓子のラインナップでしたが、次第にお客様の要望も取り入れるようになり、ラインナップが増えていきました」

取材した日も、木製の棚の上にも中にも、20種類以上の焼き菓子と10種類以上のボンボンショコラが所狭しと並べられていました。このぎゅっと詰まった密度の高いディスプレイが、“ショコラ好きさん”の購買意欲をかきたてるんですよね。遠方からの常連さんも多いそうですが、お取り寄せではなく、実際にショーケースを見て買いたいという人が多いのもうなずけます。

オープン当初から変わらないスペシャリテ「ケーク・オ・カカオ」
しっかりとしたショコラ生地に、ローストしたカカオ豆のカリカリ食感をアクセントにした「ケーク・オ・カカオ」(510円)。生地の底に、ローストしてクラッシュしたカカオニブ(※)をつけて焼くのがポイントです。さらに上にもローストアーモンドとオートミールをトッピング。生地にはカカオ分60%前後のショコラを使用し、カカオマス(※)をブレンドしたりして微調整しているのだそう。クーベルチュール(カカオ成分が高い製菓用のチョコレート)の量がかなり多く、小麦粉はわずかなので重厚な生地感に仕上げられています。
※カカオニブ、カカオマスは、カカオ豆を加工して作られるチョコレートの材料のこと
カカオを最もストレートに味わうことができて、ごまかしがきかない一品。同店には、ショコラ生地ベースの同じようなビジュアルの焼き菓子は多々ありますが、ベースの生地は全て変えているというこだわりようです。

豆大福との出合いから生まれた新商品
パウンド型のカット売りと、カヌレ型の2種類で販売している「ケーク・ツブアン」(420円)。
アーモンドパウダーたっぷりの生地に、粒あんをインしています。
「去年和菓子にはまり、一年間かけて色々な種類を食べ続けた」日下部さん。餡(あん)と餅(もち)が好きで、特に豆大福をたくさん食べたのだそう。そこからヒントを得て、餡とケークを合体させた新商品を考案。
大粒の小豆で、甘さ控えめのあっさりとした自家製餡を炊きあげるところからスタート。餡すらも、既製品では納得しないのが日下部さんらしいところです。生地には塩を入れないので、餡も甘いと全体的に甘くなりすぎるため、甘さ控えめであっさりと仕上げているのだそう。餡を生地の中に塊(かたまり)で入れて存在感をだし、表面にはダークチョコとホワイトチョコをハーフ&ハーフでかけるというリッチな一品です。
カカオもあんこも同じお豆だから、相性が悪いわけがないんですよね。

お気に入りの自信作「ガトーバスク」
日下部さんの密かなオススメ商品が、7・8月以外通年で作っている「ガトーバスク ナチュール」(470円・写真左奥)です。以前、新宿伊勢丹で開催されていたフランス展で、フランスから空輸されてきたガトーバスクを食べて感動し、自分でも作ろうと思ったのがきっかけ。
現在はプレーン以外に、フランボワーズ・ショコラのカスタードクリームとカフェ・オ・レ・クリーム入りのアレンジ版「ガトーバスク ジャポン」(530円)も作られています。
普段はあまり試作をしないという日下部さん。これまでさまざまなものを食べてきたので引き出しが沢山あり、頭の中で組み立ててから作るので失敗が少ないのだそう。でもこのガトーバスクに関してだけは、何度も試作を重ね、ようやく納得できる味にたどり着いたという自信作です。ぜひご賞味あれ!

「オープンして10年目、ずっと試行錯誤を続けてきました。時代の流れとともに気持ちも推移していきます。ただお菓子が好きで、食べて作っていただけの時代から、職人でありながら経営者としてもお菓子に関わるように。さらに今は、自分が好きだったフランス伝統地方菓子だけを追及していればいいという時代ではありません。基本的なスタイルを変えるつもりはありませんし、お客様のご要望に全て応えることはできませんが、自分が納得できるものであれば新しいジャンルにもチャレンジしていきたいと思っています」と日下部さん。

オープン当初は愛知県、岐阜県とほぼ遠方からのお客さまでしたが、最近は近隣のお客さまも増えてきているのだそう。まだまだショコラ専門店の少ない三重県ですが、ひとりでお店を切り盛りするショコラティエールのパイオニアとして、今後ますます活躍されそうですね。

(掲載情報はすべて2020年10月時点のものです)

<今回紹介した施設はコチラ>
フェーヴドカカオ(Feve de cacao)
住所:桑名市今片町29
(JR近鉄桑名駅から徒歩10分)
電話:0594-73-0886
営業時間:11:30~18:00(売り切れ次第終了)
定休日:日曜日・月曜日(臨時休業あり)

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