真珠を眺めながら酒が呑める!? 三重県庁に真珠博士がいるらしい。

2017.3.31

「つづきは三重で」市民記者

真珠の束

【取材】kanzaki chiharu

三重県庁に真珠博士がいるらしい。

しかも真珠を見れば持ち主のひととなりまで分かってしまうらしい。

そんな噂を聞きつけ「じゃあ、私の真珠も見てもらおう!」と、
家の引き出しにしまってあった真珠のネックレスを引っ張りだして三重県庁を訪ねました。

渥美さん

笑顔で迎えてくれたのは農林水産部フードイノベーション課の渥美貴史さん。

私の真珠のネックレスを見るなり「あ、いいですね」とうれしそうな笑顔。

もちろん、自分の胸元にも素敵な真珠がキラリ。

胸元のバッジ

愛読書は「真珠の世界史」

真珠の世界史

―――真珠博士はこんな人。

大学の卒業論文のテーマに「三重県らしい生き物」を扱いたいと「アコヤ貝」について研究したことをきっかけに、真珠街道一直線。
三重県の職員として働きつつ、博士号取得のため大学院に入学し、仕事場と大学の両方で真珠漬けの日々を送り「真珠を眺めながら酒が呑めるくらい真珠好き」というキャラクターを確立。

▼渥美さんプロフィール▼
2001年 三重県庁入庁
2003年~2015年 三重県水産研究所勤務
研究テーマ:真珠養殖が英虞湾に与える影響に関する研究/高品質真珠の生産性向上に関する研究
2015年 三重大学大学院 生物資源学研究科 博士後期課程卒業 博士(学術)取得
2015年~ 三重県農林水産部フードイノベーション課所属

真珠博士というのはあだ名ではなく、本当の博士なのです。

「真珠の魅力を多くの人に知ってもらい、 もっと真珠を身近に感じてもらいたい」と真珠検定のSA(シニアアドバイザー)の資格も取得し、 真珠講座を開催しているという渥美さん。
現在、フードイノベーション課では、真珠の魅力発信のほか、三重の豊かな食材を多くの人に知ってもらい、食べてもらうため、三重県食材のPRにも勤しんでいます。

―――御食国(みけつくに)・三重県

三重県は広く海に面し、海産物に恵まれた地域で、古くから神宮や宮廷に伊勢えび、あわび、海藻、そして真珠などを献上した歴史があり「御食国」と呼ばれてきました。
三重ブランドは、そんな三重の食の豊かさや環境の素晴らしさを伝えるコンテンツを認定しており、真珠もその一つ。

真珠

知っているようで知らない「三重の真珠の基礎知識」を渥美さんに伺いました。

―――そもそもどうして三重では真珠の養殖が盛んなんですか?

渥美さん:ポイントは3つ!

(1) アコヤ貝がたくさんいたこと

真珠をつくる貝は、アコヤ貝、白蝶貝、黒蝶貝など複数ありますが、三重県の英虞湾には、 昔からアコヤ貝がたくさんいました。
真珠養殖が始まる前は、海女さんがアコヤ貝から天然真珠を採っていたようです。

(2) 御木本幸吉氏(1858年~1954年)による半円真珠の養殖成功

天然真珠の乱獲によりアコヤ貝の絶滅を危惧した御木本幸吉氏は、アコヤ貝の増殖を進める中で天然真珠ができるプロセスを研究し、1893(明治26)年に世界で初めて真珠の養殖に成功した人物です。
以来、英虞湾を中心に真珠養殖の技術が発達し、三重県は真珠養殖発祥の地としての地位を築いていきます。
「ミキモトパール」として養殖真珠を世界に発信し、商業ベースにのせた御木本氏の名前はあまりにも有名です。

(3) 海女さんという人材

真珠の養殖は最初から今のような筏(いかだ)スタイルではなく、昔は、海の底に貝を並べて養殖していたため、 海女さんの存在が欠かせませんでした。
養殖真珠は貝に核を入れて海に戻しておしまいではなく、核入れ後、貝の表面に付いたフジツボなどを取り除く「貝そうじ」をしたり、水温、赤潮などに細心の注意を払いながら世話をする必要があり、その役目を海女さんが担っていたわけです。

以上のように、英虞湾の豊かな漁場に、養殖の母貝となるアコヤ貝がいたこと、それを養殖しようと考えた人物がいたこと、さらには養殖を実現させる海女さんがいたこと、この3つの条件が重なって三重から真珠養殖が誕生したんですね。

英虞湾

―――日本では三重県以外にも真珠養殖をしていますが、三重の真珠ならではの特徴はあるのでしょうか?

(1) 5ミリ以下のベビーパール

渥美さん:アコヤ貝を使った真珠養殖では、母貝に一つの核を入れて、だいたい7~10ミリまでの大きさの真珠を1粒つくることが一般的ですが、 三重県では母貝に複数個の核を入れて、5ミリ以下の小さな真珠「ベビーパール」をつくることも盛んで、ベビーパールのほとんどが 三重県の伊勢志摩でつくられています。

渥美さん:一つの貝に小さな核を何個も入れることは優れた技術と根気の要る作業です。小さな真珠から大きな真珠まで、 さまざまな真珠をつくる技術をもった職人が多いことも、真珠養殖産業発祥の地である三重県の懐の深さです。

手前のケースの極小真珠がベビーパール。
▲手前のケースの極小真珠がベビーパール。

渥美さん:最近、小さくて愛らしいベビーパールの人気が高まっています。真珠はやもすると、 大きい方が良いと思われがちですが、ベビーパールような小さな真珠が注目されることはうれしいですね。 ベビーパールを使ったアクセサリーは、デザインが新鮮でオシャレ度も高いので、 若い世代の方のエントリーパールとして、日頃から真珠を身に付けてくださるといいなと思います。 昨年の伊勢志摩サミットでは、このベビーパールを使ったラペルピンが各国首脳に贈られ、 胸元を飾りました。

伊勢志摩サミットで各国首相に贈られたラペルピンのレプリカ。
▲伊勢志摩サミットで各国首相に贈られたラペルピンのレプリカ。

(2) リアス海岸、豊かな漁場がもたらす輝き

渥美さん:三重県の真珠養殖漁場は、複雑に入り組んだリアス海岸と大小の島々により、とても波が穏やかです。また、山と海がとても近く、雨が降ると、山から海に栄養塩がたくさん流れ込むので、アコヤ貝の餌となる「植物プランクトン」が豊富という、真珠養殖にとって絶好の漁場なんです。

渥美さん:真珠は「生き物がつくる宝石」ですので、その恵まれた漁場では、伝統の技術を脈々と受け継いだ真珠職人が、刻々と変化する漁場環境を読み、アコヤ貝の声に耳を傾け、アコヤ貝にきれいな真珠をつくってもらうために、手間を惜しまずお世話をします。このお世話の内容が真珠の輝きに反映されます。

(3) 北限の養殖地で生まれるテリと透明感

渥美さん:真珠の採取は、主に12月から1月初旬に行われます。なぜ冬に真珠を採取するかというと、水温が下がると真珠層がフラットになり「テリ(真珠の輝き)」が良くなるからです。英虞湾は、世界の真珠養殖漁場の中でも最北限に位置します。そのため、水温が下がりやすく、テリの良い真珠をつくりやすい漁場です。

渥美さん:三重県では「当年物(とうねんもの)」と呼ばれる、核入れから1年以内に採取される真珠が多くつくられています。「1年もかからないの?」と思われるかもしれませんが、三重県では、アコヤ貝がたくさん餌を食べて、たくさんの真珠層を規則正しく積み重ねることができるため、透明度の高い真珠をつくることができるわけです。長く飼育すれば良いというものではないのです。つまり、この水温の低さと餌の多さゆえにできる、テリの良さ、透明度の高さが三重の真珠の特長の一つ。 ちなみに、核入れから1年以上飼育してから採取する真珠を「越物(こしもの)」と呼びます。

情報

―――ズバリ、質の良い真珠の見分け方を教えてください!

渥美さん:まず、じっと顔を近づけて、自分がキレイに映ることが良い真珠の最低条件です。

真珠

渥美さん所有の真珠サンプルを手に乗せて、じぃーーー・・・っと見つめると、確かに、真珠によって映り具合が違う!!
ぼんやりしているもの、鮮明に鏡のように映るもの、深みがあるもの、けっこうな違いがあることに気付きます。

渥美さん:真珠の質の差は(1)巻き(2)テリ(光沢)(3)キズで決まります。巻きは真珠層の厚み、テリは真珠の輝きのことで、巻きや真珠層が規則正しく積み重なっているか、初心者が見極めるのはなかなか難しいので、まずは自分を映してみるのが分かりやすいと思います。お店などで、真珠に顔をじっと近づけて見てるとお店の人に一目置かれますよ。単品で見るよりも、いろいろ見比べて目を肥やすと、その違いが自然と分かるようになってきます。

渥美さん

渥美さん:あとは好みの世界になりますが、(1)大きさ(2)色(3)形
大きくて丸ければ良い、色は何色が高級、というわけではありません。やはり優先すべきは「巻き」と「テリ」です。質と好みを総合して、予算にあったものを選んでいくのがベストですね。

渥美さん:ちなみにこれが僕の一番お気に入りです。美しいでしょ~。これを眺めながらお酒呑んだりもします!

渥美さんのマイベストパール。
▲渥美さんのマイベストパール。

確かに、深みのある光沢は素人目に見ても違いが分かる美しさ。
真珠のことを終始楽しそうに話す、渥美さんから深い真珠愛が伝わってきました。

―――そろそろ真珠を見てもらいましょう。

まだまだ話は尽きませんが・・・。
ドキドキしながら引っ張り出してきた真珠を見ていただきました。

渥美さん

渥美さん:真珠はね「寂しがり屋な宝石なんです」

へ?

渥美さん:たまに相手してあげないと、すねて輝いてくれなくなるんですよ。

あ・・・久しぶりに引き出しから引っ張り出してきたのがバレバレ!?

渥美さん:日頃の手入れは、身に付けた直後にこうして柔らかい布で拭くだけでいいんです。また、長く身に付けないときは1カ月に1度、手入れしてあげると輝き続けてくれるんです。専用のクロスもありますが、眼鏡拭きでも大丈夫ですよ。

なるほど。
「真珠を見ればひととなりが分かる」というのは、「真珠を見たらその持ち主が日頃、真珠をどう扱っているのか、 真珠を大事にしてくれる人なのかが分かってしまう」ということなんですね。
きゃー反省。

【長持ちお手入れポイント】

(1) 使用後は直ちに真珠に付着した汗や皮脂を拭き落す。

→真珠の主成分は、炭酸カルシウムなので、お酢やレモン果汁等の酸性のものは嫌います。
あと、汚れたからといって水洗いはしないでください。
真珠は、水で濡れると空気中の二酸化炭素を吸収し、真珠表面を酸化させます。
また、水分が蒸発すると真珠が乾燥します。
酸化と乾燥。どちらも、真珠表面が荒れ、テリが低下する原因になってしまいます。

(2) 硬い石の付いたジュエリーやアクセサリーと一緒に収納しない。

→真珠は比較的柔らかい宝石なので、硬いものと一緒にするとキズつくことがあります。

(3) ネックレスの絹糸は定期的に交換する。

しなやかな絹糸は真珠のネックレスによく使われますが、伸びる特徴があります。
使っているうちに、真珠と真珠の間に隙間ができてくるので、定期的な交換を
おすすめします。

渥美さん:細かい注意点はいろいろありますが、一番は「使ってあげること」! 真珠は自然のものゆえに、経年変化する宝石です。ちゃんと手入れしている真珠は経年変化しますが劣化するわけではありません。その人の人生とともに輝きに奥ゆきが増していくことも真珠の特長であり魅力。冠婚葬祭だけでなく、普段からカジュアルに使いこなす人が増えていってほしいですね。そういった意味でも小さな頃から真珠に触れる機会を増やしたいと思い、小さなお子さんから参加できる真珠講座を開くなどの活動もしているんですよ。

「真珠で人と人をつなげていきたい。また、真珠と食をつなぐことができれば面白いですね」と思いを語る渥美さん。
平成29年4月からは、東京に舞台を移し、真珠の魅力発信を行っていくという。

真珠の束

三重の真珠の成り立ちを通して、三重県が古くから「御食国」と言われた背景には、豊かな自然からの恵みがあり、真珠は、その恵みにさらになる輝きを与えていることがよく分かりました。

もっと使おう・・・そう思いながら、今日1日付けていた真珠のネックレスをクロスで拭いてジュエリーボックスにしまいました。


関連情報

三重ブランドホームページ

三重ブランドに「桑名のはまぐり」と「伊勢たくあん」を新規認定しました。
(三重県ホームページ:平成29年3月15日報道発表)

■御木本幸吉が世界で初めて真珠の養殖に成功した「ミキモト真珠島」がある鳥羽市の情報も要チェック!
→「つづきは鳥羽市で