東京五輪・新正式種目“ボルダリング”の聖地はもしかして三重県かも!?

2019.5.30

「日本のよさ」探し人 堀内みさ

ああああ

 

最低限の道具で自然の岩場や人工の壁面を登る「ボルダリング」。2020年に開催される東京オリンピックでは、ボルダリングを含むスポーツクライミングが新種目に正式採用され、注目を集めています。また、2021年に開催される三重とこわか国体でも、スポーツクライミングは正式競技の一つになっています。

そもそもスポーツクライミングは、自然の岩場での冒険的な挑戦をルーツに持つ競技。高さ5m以下の壁に設定されたコースを、制限時間内にいくつ登れたかを競うボルダリングのほか、12mを超える壁に設定された複数のコースを登り、制限時間内で到達高度を競う「リード」、さらに、15mの壁に設定された同一条件のルートを駆け登り、そのタイムを競う「スピード」の3種目で順位が競われます。中でもボルダリングは、ここ数年、日本でも愛好者が急増。三重県内にもボルダリング施設を備えるジムが増えてきました。

今回はそんなボルダリングの魅力を探るべく、伊勢市にある三重県営サンアリーナのボルダリング施設を取材。また、国際大会でも活躍する三重県出身のプロクライマー、渡部桂太(わたべ けいた)選手にも話をうかがい、ボルダリング競技の奥深さを教えていただきました。

 

国内最大級のボルダリング施設を備える伊勢市の「三重県営サンアリーナ」

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地域に根づいた交流やさまざまな情報発信の拠点となる三重県営サンアリーナに、ボルダリング施設がオープンしたのは2018年4月のこと。サブアリーナの壁面に、形や色もさまざまな「ホールド」と呼ばれる突起物が配置された、高さ5mの壁が設けられています。

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▲メインウオールは幅21m。初心者から中級者に対応。64のコースがあります。

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▲サイドウオールは幅7m。中級者から上級者用の25コースがあります。隣接するスポーツジムには上級者用のボルダリング施設も。

メインウオールとサイドウオールのコースを合わせると89コースにも! これは国内最大級だそう。ちなみにホールドと呼ばれる突起物は、同じ色のテープの物を追って登っていくのがルールです。

訪問したのは、「ボルダリングDAY」にあたる水曜日。月に3回から5回ほど開かれるこの「ボルダリングDAY」では、午後6時からの3時間、インストラクターに指導を受けながらボルダリングが楽しめます。開催が不定期なのは、ボルダリングのウオールが設置されたサブアリーナが、ほかのイベントにも使われるため。2つのウオールは通常カーテンで覆われているそうです。

午後6時。待ちかねていたように何組かの親子連れが、次々とサブアリーナに入ってきます。壁があるのは広々とした空間の一番奥。子どもたちは一目散に壁を目指し、駆け寄っていきます。

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早速、中級から上級者向けのサイドウオールを一人の女の子がスイスイと登っていきます。

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彼女は小学2年生の西井七海(にしい ななみ)ちゃん。お母さんの智子(ともこ)さんと一緒にほぼ毎回、午後6時から1時間という約束でボルダリングを楽しんでいるそう。

七海ちゃんがボルダリングを始めたのは、智子さんに誘われたから。「小さい頃から木登りが好きだったので、やらせてみたいなと思って」と智子さん。木登り感覚で気軽に取り組める。それも人気の理由のようです。初めて同施設を訪れた日、七海ちゃんは見学だったそうですが、2回目からは自分でも登るようになったとか。今では専用のシューズを履いて上級コースに挑戦するまでに。「ゴールできたときはうれしいし自信になる」と、はにかみながら話してくれました。

家族全員で楽しんでいる姿も見られました。

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小野田(おのだ)さん一家です。家族の中で最初にボルダリングを始めたのは、小学1年生の陽(はる)くん。松阪市にある「みえこどもの城」で初めて体験して以来、登るのが好きになり、サンアリーナに通い始めたとか。やがて付き添いで見ていた母親の三奈(みな)さんも登るようになり、今回から父親の篤嗣(あつし)さんも参加することに。篤嗣さんは、「前回見学し、自分もできるのではとトライしたのですが、予想以上にハードで驚きました」と、陽くんと三奈さんが登る姿を眺めながらひと休み。それぞれが自分のペースで楽しめることも魅力なのでしょう。

7時を過ぎると会社帰りの人なども加わり、メインウオールはにぎやかに。

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ボルダリングでは、ほかのクライマーの邪魔にならないよう、近い距離で登らないことも大切なルールです。待っている間は周りの人と談笑したり、コースのラインを観察したり。中には家族で追いかけっこをしている人もいます。開放的な空間で皆のびのびと楽しそう。

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インストラクターの小寺長喜(こでら ちょうき)さんに、登るコツを聞いてみました。

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小寺さん「ボルダリングでは手の筋力に目が行きがちですが、実は足も重要です。登るときはしっかり足を使い、手は目指すホールドに向けて伸ばすという感じで登ってみてください。ホールドにもいろいろな種類があり、それぞれ持ち方も違うんですよ」

必要なのは屋内用シューズのみ。手軽に始められる一方で、ホールドの形状やコースに合わせ、さまざまな身体能力が試されるボルダリング。その楽しさ、難しさをほんの少し垣間見た気がしました。

 

三重県出身のプロクライマー、渡部桂太(わたべ けいた)選手に聞くボルダリングの魅力と奥深さ

渡部桂太㈮

小さい頃からとにかく「登る」という行為が好きだったという渡部桂太さんが、はじめてボルダリングを体験したのは小学2年生のとき。自身の出身地、四日市市のジムでのことでした。以来少なくとも週に1回は人工壁を登ったり、ジムで知り合った大人のクライマーたちと岩登り、つまりロッククライミングをしたりするように。やがて「登る」行為がスポーツとして成り立っていることを知り、競技の世界に挑戦するようになりました。


渡部さん「そもそもクライミングは、壁に設置されている課題(コース)を登りきるために必要な要素を、どう自分で吸収するかという、自分を高めるただ1点から派生したスポーツです。そこが、ほかの対人スポーツなどとは異質な特徴で、自分にはすごくフィットしました」

◇どんなところに魅力を感じますか?
渡部さん「クライミングは基本的にフィールドアクティビティー。アドベンチャーでもあります。もともと人工壁も、外で登れないときの練習場としてできたのではないでしょうか。自然を感じながら、山の岩場を登るのは環境面でも楽しいですが、僕自身は人工壁と岩場、どちらでもいいと思っているんです。リスクや制約がある中で楽しむのがこのスポーツの醍醐味。ゴールに到達することも目的ですが、それだったら脚立を立てて登ればいいわけですよね。クライミングは、到達までのプロセスも魅力の一つなんです」

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もっとも、ボルダリング競技は時間との勝負でもあります。最初に課題(コース)を1分、または2分オブザベーション(観察)した後、控え室で待機。その間、他の選手の登りは見られません。ひたすら自分の中でどう登るかイメージをつかみ、4分、または5分の本番に臨むのです。制限時間内であれば何度トライしてもOKですが、そのたび登り方を修正し、また、次の課題に備えて筋力を疲弊させないなど、多くの冷静な見極めが必要になります。

渡部さん「照明の当たり具合や観衆の熱気、湿度や気温など、会場の環境は1分1秒変わります。また、室内でも風は起こりますから、より良い条件で戦えるようタイミングを見極めることも大切です」

◇五感全部を使って登っているんですね。

渡部さん「なぜ今、滑ったんだろう、手が離れたんだろうと考えて、こうなったからだと限られた時間の中で分析し、修正できるよう、毎日24時間準備をしているという感じです。例えば歩くという行為でも、身体操作の練習なんです。何をしたら足がそこへ行くか、どう足を動かすかを日々意識し、分析することが、このスポーツでは生きてきます。コップをどう持つか、右手ばかりを使わないなど、筋トレだけでなく普段からできることはたくさんあるんです」

日常生活の一つ一つの動きを何げなく流すのではなく、よく観察して理解する努力をする。その積み重ねが、動きに関する引き出しを増やし、限られた時間内に凝縮されて出てくるのでしょう。

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最後に今後の抱負をうかがいました。
渡部さん「生きているだけでトレーニングのような感じになっているので、そのスイッチを切る時間を作ることが今の課題です。でも、身体を動かすという行為がわかっていくのは本当に好きなので、クライミングを通して気づいていけたらと思っています。成績などの結果はその先に出てくると思うんです」

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▲サンアリーナのボルダリング施設の壁面上部にある渡部選手のサイン。

わずか数分、数個のホールドを使って、身体能力や五感を駆使して登っていくボルダリング。シンプルだからこそ奥深くもあるこのスポーツを、より深く楽しんで観戦するために、あなたも始めてみてはいかがですか?

 

自然を活用、子どもも親しめる、まだある!魅力的なクライミング・ボルダリング施設

■熊野ボルダリングエリア

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地元の愛好者が地権者の協力を得て2017年に公開したスポット。瀞流荘エリアと夕陽の丘エリアの2エリアがあり、天然の巨岩を使った約140コース(課題)が設定されています。自然を生かしたワイルドなボルダリングが楽しめるのが魅力。事前にHPを確認し、ルールとマナーの順守を。

■GRAVITY RESEARCH MIE(グラビティリサーチ三重)

ボルダリング

初心者、ベテランを問わず、誰もが楽しめるクライミング施設で、自分のレベルに合わせて楽しめます。初心者のための体験会や、クライミングに必要なコツやスキルを、参加者みんなで登りながら身につけるビギナーズセッションなども定期的に開催。

■三重県立みえこどもの城 プレイランド

こどもの国

三重県出身で活躍する選手、田嶋(たじま)あいかさんや吉村(よしむら)もえさんが、子ども時代にボルダリングに親しんだ施設。高さ7m、幅14mのウオールは児童館施設では全国最大級。クライミング選手権などの特別イベントも開催しています。

(掲載情報は、すべて平成31年3月時点のものです)

<今回紹介した施設>
★三重県営サンアリーナ サブアリーナ
住所:伊勢市朝熊町字鴨谷4383-4
Tel:0596-22-7700
「ボルダリングDAY」開催日時:月3〜5回の原則水曜 18:00~21:00
利用料金:700円
http://sun-arena.or.jp/
★熊野ボルダリングエリア
住所:瀞流荘エリア 瀞流荘(熊野市紀和町小川口158)から徒歩約15分、夕陽の丘エリア 夕陽の丘公園(熊野市紀和町湯ノ口)から徒歩約10分
※安全のため、WEBでの入場届をお願いしています。http://www.city.kumano.mie.jp/kankou/boulderingarea_180323/180323boulderingarea.pdf
https://kinanclimb.wixsite.com/mysite/blank
★GRAVITY RESEARCH MIE(クラビティリサーチ三重)
住所:四日市市諏訪栄町6-4 スターアイランド3階
Tel:059-329-7777
営業時間:10:00〜20:00
利用料金:1日券 一般 1,600円、小学生 500円(18時以降は一般 600円)※初回登録料 1,500円
http://www.gravity-research.jp/shop/mie/
★三重県立みえこどもの城 プレイランド
住所:松阪市立野町1291(中部台運動公園内)
Tel:0598-23-7735
利用料金:1回45分 200円
※年齢・時間によって、利用できるコースが異なります。
https://www.mie-cc.or.jp/map/facility/play_land/

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