ボランティアガイドとめぐる三重旅

2018.5.18

おでかけ情報はおまかせ 内山真紀

IMG_1677

地元の方ならではの情報が満載のおすすめガイドツアー

突然ですが、皆さんは観光地に出かけたとき、どんなふうに町を歩いていますか? ガイドブックを片手に、スマホのネット情報をチェックしながら、下調べはせずにとりあえずブラブラ…。いろいろな“巡り方”がありますが、地元のボランティアガイドの存在はご存知でしょうか。少人数でも利用でき、無料で案内してくれる上、地元在住ならではの小話を聞けるなど、ガイドブックやネット情報とは違った魅力があり、今、密かに人気なのです。

そこで今回は、関西のライター・内山真紀が、歴史的な街並みが残る津市の一身田寺内町(いっしんでんじないちょう)と、国史跡に指定され、今なおさまざまな不思議が残る多気郡明和町(たきぐんめいわちょう)の斎宮跡(さいくうあと)へ。それぞれのエリアで、ボランティアガイドのツアーに参加してきました。※記事中の料金はすべて税込み。

 

お寺を中心に栄えた風情ある町並みを散策
●一身田寺内町ほっとガイド会

IMG_1848
三重県津市の北部にある、高田本山専修寺(たかだほんざんせんじゅじ)を中心に栄えた一身田寺内町を訪れました。まずはボランティアガイドの拠点である、一身田寺内町の館へ。

IMG_1781
この日、案内してくださったのは、一身田寺内町ほっとガイド会の岡本靖弘(おかもとやすひろ)さんと藤井由美子(ふじいゆみこ)さんのお2 人。

IMG_1667
早速、専修寺からガイドがスタート。息を飲むほどの迫力がある山門は、1704 年建立といわれていて、高さ15.5 メートルの2 階建てです。

IMG_9368
山門をくぐり抜けて正面に見えるのが、2017 年11 月に国宝に指定された「御影堂(みえいどう)」。
文化庁の報道資料によると、「高度な建築技術と卓越した装飾技術により壮麗な信仰の空間を創出しており、我が国を代表する近世寺院建築として極めて高い価値を有している」とあり、「如来堂(にょらいどう)」とともに、建造物としては三重県初の国宝となったそう。

「専修寺で一番大きな建物で、現存する木造建築物としては、国内で5 番目の大きさです。約6 年の月日をかけて完成したそうですが、すべて人力だった時代。これだけの建物を6 年で完成させることができたのは、津藩の藩主・藤堂家からの莫大な資金援助があったから。藤堂家のお姫さまが専修寺へお嫁入りして、関係が深まったんですよ」と、お堂へと向かいながら岡本さんが解説してくれました。

IMG_1701
お堂の中は外観の落ち着いた雰囲気とは異なり、金襴(きんらん)巻きの大きな柱や装飾など、豪華な印象。浄土真宗のお寺としては珍しいという、極彩色の装飾も見事です。

「780畳もの広さがあります。中央に『見真(けんしん)』と書かれた額が見えますよね。見真とは、宗祖・親鸞聖人(しんらんしょうにん)が明治天皇からいただいた大師号です。あの額は畳3 畳分もあるんですよ」という藤井さんの説明にびっくり。お堂の中では、そんなに大きいとは感じられません。それだけ、建物のスケールが大きいということですよね! ガイドさんと一緒でなければ、気づかなかった見どころです。

続いて、「証拠の如来」と呼ばれる、阿弥陀如来立像を本尊とする「如来堂」へ。御影堂の西側にあります。

IMG_9393
お堂の中へ…。「欄間の中にはシルクロードから渡ってきた、さまざまな楽器があるんです。ちょっと探してみてください」という藤井さんの言葉に、さっそく探してみると…。
見つかりました! 華麗な金箔の欄間に、笛や太鼓、琴など、色鮮やかな楽器が隠れています。じっくり見ないと気づかないかもしれません。ガイドさんと一緒だからこその楽しみ方ですね。

IMG_9399
さらに、「この上の所を見てください。お堂のいたるところに彫刻の装飾があって、中国の故事に基づいた人物がいますよ」と藤井さん。

IMG_1727
仙人らしき人物が持つひょうたんから、馬が出てくる彫刻を発見。「ひょうたんから駒」をモチーフにしているそうです。ほかにも、いろいろなモチーフがあるので、探してみてくださいね。

専修寺を後にし、寺内町の散策へ。一身田寺内町の治安を守っていたという、桜門があった場所へ案内してもらいました。現在は門はなく、橋がかかっています。
IMG_1769
「一身田寺内町はお城を囲む堀(ほり)のような、環濠(かんごう)に囲まれています。かつては3 カ所の出入り口しかなく、それぞれに門が建てられていました。伊勢方面への出入り口だった黒門、江戸方面への出入り口だった赤門があり、この桜門は京都方面への出入り口。午前6 時に開き、午後6 時に閉じられ、治安を守っていたそうです。寺内町を守ってきた環濠は、現在もほぼ完全な形で残されていて、日本国内でもとても珍しい例なんですよ」

町並みを見ながら歩いていると、和菓子屋さんを発見。

IMG_1806
藤井さん「創業180余年の老舗和菓子店たけやさんです。いろんなメディアにも紹介されている、町の名店。おすすめですから、ぜひ寄っていきましょう」という藤井さんの言葉に誘われて店内へ。

IMG_1813
こちらが、名物たけやまんじゅう(1 個200 円)。北海道十勝産の小豆を使用し、豆本来の風味を楽しめる蒸しまんじゅうです。甘すぎない素朴なおいしさ。ボリュームがあったのに、ぺろりと食べてしまいました。

IMG_1788
町屋が残る通りは、とても風情があります。
岡本さん「特に専修寺さんの前の道では、昭和の頃はよく時代劇の撮影が行われていました。国道なんかが舗装される前でしたから、京都の映画クルーが電車を乗り継いでここまで来ていたものです」

IMG_1826
江戸時代から変わらない路地。今も昔も、住民の近道なのだとか。

お店にフラリと立ち寄って地元の人と交流したり、昭和の頃の話や地元の人々が使う抜け道を教えてもらったり…。地元の方によるガイドツアーのならではの醍醐味を満喫しました。

 

 

◆幻の宮・斎宮跡(さいくうあと)で古代の歴史を体験
いつきのみやガイドボランティア

IMG_1573
続いては、多気郡明和町の国史跡「斎宮跡」へ。

ボランティアガイドさんの拠点である「いつき茶屋(斎宮跡休憩所)」には、ガイドさんが常駐しているので、空きがあれば当日でも対応してくれます。

IMG_1399
いつきのみやガイドボランティアの、会長・田所秀明(たどころひであき)さんと、ガイド歴15年の佐々木史子(ささきふみこ)さんに案内してもらいました。

そもそも、斎宮跡とは何なのか…。1/10 史跡全体模型を見ながら、ガイドのお2 人に教えていただきました。

IMG_1385
「飛鳥時代から南北朝時代にかけての約660 年間、占いによって選ばれた未婚の皇族女性が、天皇に代わって伊勢神宮の天照大神(あまてらすおおみかみ)に仕える日々を送るという制度がありました。選ばれた皇族女性は『斎王(さいおう)』と呼ばれ、斎王が暮らしていた場所がここ『斎宮』。『いつきのみや』とも呼ばれていました。史跡の規模は東西約2 キロメートル、南北約0.7 キロメートル、総面積は約137 ヘクタール。甲子園球場およそ35 個分にもおよびます。現在、私たちが暮らしている住宅地なども含まれていて、発掘調査は現在進行形です。実は私の自宅下にも、遺跡が眠っているんですよ」と、田所さん。

佐々木さんは、「斎王が暮らすためだけに用意されたというのですから、地位の高さがうかがい知れますよね。さらに斎宮では、事務をする官人を中心に斎王に仕える女官など、総勢500 人以上が執務をしていたといわれています。斎王は、国の平安のため祈りの日々を送りながら、ときには貝合わせをしたり、歌を詠んだりして、みやびな生活を送っていたそうですよ」と続けます。

IMG_9322
斎王が住んでいた内院の1/10模型も。

IMG_1390
天気のいい日はこのように人形が置かれるのだそう。「ジオラマのようでかわいらしいでしょ」と佐々木さんが教えてくれました。

IMG_1520
続いて案内されたのが、「寝殿造」などをモデルにして建築された、「いつきのみや歴史体験館」。斎宮が最も栄えた平安時代の遊びや、生活文化を体験できる場所です。「子どもさんがいらっしゃる家族連れにもおすすめです」との佐々木さんの説明を聞きながら施設内へ。

IMG_1437
まず目に飛び込んでくるのが、斎王が都から斎宮まで乗ってきたとされている「葱華輦(そうかれん)」。このように、実際に乗ってみることもできますよ。

さらに、「十二単を簡単にした、小袿(こうちき)は無料で体験できるので、ぜひ着てみてください」と、佐々木さんに勧められ、私も体験。

IMG_1460
小袿は位の高い貴族や皇族が着ていた略装。あっという間に着せてくださいました。

IMG_1466
こんな記念撮影もできます。ほかにも、本格的な十二単を着て記念撮影ができる「平安装束体験」もあり、人気だそうですよ。

IMG_1500
貝合わせという遊び体験も。

IMG_1493
トランプの神経衰弱のようなゲームです。このほかにも、盤双六(ばんすごろく)などの遊びが体験できます。

次に向かったのは「さいくう平安の杜」。平安時代に儀式などが行われていた3 棟の建物が、発見された場所に実物大で忠実に再現されています。

IMG_1542
こちらが正殿。まるで当時の建物が時空を超えて出現したようです。

IMG_1554
「平安時代の建築技術を忠実に再現しています。ヤリガンナという道具を使用しているので、柱の表面はツルツルではなく、細かなデコボコがあります。これも特徴なんですよ」と田所さん。

IMG_9340
最後に訪れたのは、「斎宮歴史博物館」。発掘された貴重な出土品を展示するほか、文献資料を手掛かりに、斎王が斎宮に来てから都へ帰るまでを紹介しています。

IMG_1649
これは、「蹄脚硯(ていきゃくけん)」と呼ばれるすずりの破片。1970 年にこの蹄脚硯の破片が発見されたことがきっかけで、大規模な発掘調査が行われ、斎宮を解明する手掛かりになったのだそう。この出土品があったからこそ、斎宮の歴史がひもとかれていくことになったと聞いたら、感慨深いですよね。

IMG_1609
館内にはゲーム感覚で楽しめる展示もあり、初心者から歴史好きな方までが楽しめる工夫がされていました。

IMG_1619
歴代斎王の年表です。こんなにもたくさんの皇族女性が、国の平安のために祈りの日々を送ったんですね。年表を見ながら、田所さん、佐々木さんのお気に入りの斎王や、それぞれの斎王にまつわる物語も教えてくださいました。斎宮について理解の深いガイドさんだからこその情報が聞けました。

2 つのガイドツアーに参加しましたが、どちらもボランティアガイドさんが、時間や希望に合わせてコースを仕立ててくれるのが魅力。楽しみ方を知り尽くしている方たちだからこその充実の内容でした。地域との関係、歴史なども聞け、より深く理解できたので大満足です。皆さんも一度、ボランティアガイドさんとの旅を体験してみてはいかがでしょうか。

おもてなし三重 観光ボランティアガイド

三重県で観光したい地域が決まったら、下記からボランティアガイドを探し、気軽に申し込みを。

https://www.kankomie.or.jp/volunteer/index.html

 

今回紹介したボランティアガイドの問い合わせ先&施設情報はこちら。

一身田寺内町ほっとガイド会

問い合わせ先:一身田寺内町の館
住所:津市一身田町758
電話:059-233-6666(FAX同じ)
開館時間:9:30~16:00
休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、12 月29日~1 月3 日
http://www.jinai-yakata.com/guide.html

<利用方法>

実施日時:利用者に合わせて対応。※立ち寄りスポットの営業時間に注意。

申し込み:1 週間前までにWeb、または電話・FAXで要予約


★真宗高田派本山 専修寺
住所:津市一身田町2819
電話:059-232-4171
参拝時間:5:00~17:30(両御堂の参詣時間:6:00~15:30)
参拝料金:無料
http://www.senjuji.or.jp/index.php

★たけや
住所:津市一身田町2769

電話:059-232-2056

営業時間:8:30~19:00

休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)

 

多気郡明和町 いつきのみやガイドボランティア

問い合わせ先:明和町観光協会
住所:多気郡明和町斎宮2811
電話:0596-52-0055
営業時間:8:30~17:15
休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始
https://www.kankomie.or.jp/volunteer/detail_22.html

<利用方法>

実施時間:10:00~12:00、13:00~15:00。※予約の場合は延長などの相談可
申し込み:1 週間前までにWebからメール、または電話で。※「いつき茶屋(斎宮跡休憩所)」で空きがあれば当日対応可

 

★いつきのみや歴史体験館

住所:多気郡明和町斎宮3046-25
電話:0596-52-3890
営業時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、祝日の翌日(土曜除く)、年末年始
料金:入館無料 ※有料の体験有り
http://www.itukinomiya.jp/

★さいくう平安の杜
住所:多気郡明和町斎宮2800
電話:0596-52-7126(明和町斎宮跡・文化観光課)
営業時間:9:30~17:00(入園は16:30まで)※季節によって変更あり
休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、年末年始
料金:入園無料

★斎宮歴史博物館
住所:多気郡明和町竹川503
電話:0596-52-3800
営業時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休日:月曜(祝日の場合は翌火曜)、祝日の翌日(土曜除く)、12月29日~ 1月 3日
料金:大人340円、大学生220円、高校生以下無料
http://www.bunka.pref.mie.lg.jp/saiku/

関連情報
つづきは津市で
つづきは明和町で

■三重県 専修寺御影堂・如来堂の国宝指定について
■観光三重 高田本山専修寺が国宝になりました!建築物としては三重県初
■観光三重 Storyで紡ぐたび もののあはれ中南勢ものがたり
平安絵巻 国史跡・斎宮跡