地元のお母さん直伝!三重県の郷土料理レシピ

2018.8.10

「日本のよさ」探し人 堀内みさ

三重県 郷土料理 トップ画面

 

南北に長い海岸線や多くの山々、そして内陸部にある盆地と、多彩な地形を持つ三重県。豊かな自然に恵まれ、海や山、両方の幸がそろうこの地では、人々が長い年月をかけて、その土地ならではの料理をさまざまに育んできました。今回はその中から、3つの地域の魅力あふれる郷土料理を紹介します。

簡単なのに豪華!海の幸で作るもてなし料理「てこね寿司」(志摩市)

 

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全29市町のうち半数以上が海に面している三重県では、海の幸を使った料理が豊富。中でも「てこね寿司」は、簡単ながら見栄えもよく、もてなし料理にもぴったりです。

「てこね寿司」は、もともと志摩地方の漁師たちがカツオ釣りに出かける際、手軽に食事をするために、釣ったばかりのカツオをぶつ切りにしてしょうゆに漬け、ご飯と一緒に手でこねて混ぜたのが始まりとか。つまり漁師料理がルーツです。

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今回作り方を教えていただいたのは、志摩市在住の井上美佐(いのうえ みさ)さん。大学生と高校生、2人のお子さんを持つ井上さんは、長年、三重県水産研究所に勤務し、現在は伊勢農林水産事務所に。農林水産技師女子会プロジェクトの一員として「郷土食」をテーマとした活動もされていました。

井上さんのお義父さまはカツオ釣りの漁師さん。結婚後、お義母さまが作ってくれた「てこね寿司」がとてもおいしく、井上さんもその作り方を受け継いだのだそう。「『てこね寿司』は、例えば日曜日の夕飯などに作ります。カツオの旬は春と秋ですが、『てこね寿司』は冷凍のカツオでもおいしくできます。逆に生よりも身の色がきれいにでるんですよ。わが家では冷凍のカツオを常備し、思い立ったときにすぐ作れるようにしています」

ちなみに、冷凍物は以下のようにするとうまく解凍できるそう。

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今回の主役、カツオです。まず「てこね寿司」を作る数時間前に、熱めのお湯(50℃程度)でこの冷凍のカツオの表面を1分ほど洗います。やけどに注意してください。

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その後、カツオの水分をキッチンペーパーで拭き取ってくるみ、ラップで包んで冷蔵庫へ。中に芯が残っているくらいが切りやすいそう。

では、作り方をご紹介します。

【材料】(8人分)

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カツオ冷凍節 1本(400g~500g程度)
※魚はカツオでなくても、マグロ、ブリなどお好みの刺身の柵でOK

◇酢飯(8人分:4人分なら半量で)
米 5合
砂糖 1カップ
酢 0.5カップ
塩 小さじ1強

◇煮切りしょうゆ(カツオの漬け汁)
しょうゆ 魚が浸かる程度(100-200cc)
うま味調味料 少々

◇薬味
ショウガ 1片
大葉 10枚
いりごま 適量
錦糸卵 適量

【作り方】
1.カツオの漬け汁となる煮切りしょうゆの準備をします。鍋にしょうゆとうま味調味料を入れて火にかけ、一煮立ちしたところで火を止めます。その後、常温まで冷まします。

2.寿司酢を作ります。ボウルに砂糖、酢、塩を入れて混ぜます。塩は分量より少し多めの方が、酢が効いておいしいそう。砂糖はきちんと溶けきらない状態でOK。炊きたてのご飯に混ぜると熱で自然に溶けます。

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3.酢飯を作ります。熱々のご飯に寿司酢をまわしかけ、米粒をつぶさないように混ぜます。

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4.酢飯を冷ましている間に薬味とカツオの準備を。ショウガは粗くみじん切りに。大葉は千切りにした後、水にさらします。カツオは大きめに切ります。厚さは好みで。「半解凍の状態だと、汁も出ず、色がきれいなまま切ることができますよ」(井上さん)

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5.密閉式のビニール袋に、冷ました煮切りしょうゆと切ったカツオを入れ、10~15分漬け込みます。

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6.いよいよ盛りつけです。酢飯にショウガ、ごまを入れてよく混ぜ、その上に漬けたカツオをのせ、大葉と錦糸卵を振りかけてできあがり。

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「ちなみにわが家では、家族だけで食べるときは、薬味それぞれを別に置いておき、セルフサービスにしています。それぞれが好きな物を好きな分量入れて、自分で混ぜて食べるんです」(井上さん)

口に入れると、甘い酢飯にショウガや大葉が入り、さらにしょうゆだけで味付けしたカツオが入ることで、全体の味のバランスはいいあんばい。いくらでも食べられそうです。
お客さまが来たときは、きれいに盛りつけてごちそうに、家族で食べるときは、セルフサービスでわいわいと。「てこね寿司」を囲む食卓は、にぎやかで楽しそうです。

 

魚のうま味を味わい尽くす贅沢なみそ汁「大敷汁」(尾鷲市)

 

尾鷲市の郷土料理、大敷汁(おおしきじる)も漁師料理がルーツです。

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大敷とは、東紀州の漁師たちがブリ、タイ、イワシなどを捕るために張っている大型の定置網のこと。漁師たちは、早朝の漁獲作業の後、余った小魚などをぶつ切りにし、みそ汁にして豪快に食べるそう。つまり、大敷汁は漁師さんの朝ご飯なのです。

大敷汁を作ってくれたのは、やはり井上さん。実は井上さんは尾鷲市に14年間暮らしたことがあり、調査で漁に同行した際、実際に船上で大敷汁を食べたこともあるとか。「夫の趣味が釣りで、新鮮な魚が手に入ったときなどに作るので、大敷汁はてこね寿司以上に頻繁に食卓に上がります」

【材料】

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魚(イワシ、アジ、イサキなど、その時季に手ごろな価格の魚でOK)
みそ
だし汁
ネギ
ミョウガ(好みでどうぞ)

「魚は何を使ってもいいですが、新鮮なものを使うことがポイントです。魚の脂は酸化しやすく、すぐに臭みが出てしまうんです。みそは今回赤みそを使いましたが、合わせみそでもいいですよ。ただ、ネギは必ず入れてくださいね」(井上さん)

【作り方】
1.魚をさばきます。

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最初にひれの後ろ部分に包丁を入れ、

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頭部を落として内臓を取り出します。

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うろこを落とすのも忘れずに。こちらはアジだけにある鋭い突起状のうろこ、ぜいご。

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尾びれも落として、あとはぶつ切りにします。

井上さんは、「ただ、ぶつ切りにするだけだと食べたときに骨があってけっこう大変なので…」と、魚の骨を取り、身をさばいていました。魚をさばくのが不安な人は、切り身を購入してもOKです。
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さばいた後はすぐ氷の上に。新鮮さを保つためのきめ細かな配慮です。

2.鍋にだし汁を沸騰させ、魚を入れます。沸騰していないと生臭くなるので注意。その後、魚から出るアクを取ります。魚は火を入れすぎるとパサついてしまうので、火加減はやや弱火で。

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井上さんは何度もゆで具合を確認されていました。シンプルな料理ほど、ちょっとした心配りが味の差になるんですね。
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3.魚に火が通ったらみそを入れ、味を整えます。最後に刻んだネギ、ミョウガを散らしてできあがり。

まずは熱々の汁を一口。いろいろな魚のうま味がふわーっと口中に広がり、思わず「うわーっ」と声が出てしまいました。

大敷汁については、地元尾鷲市にある「夢古道おわせ」でランチバイキングを作っている、地元のお母さんにも話をうかがってみました。こちらのランチは、地元のお母さんたちのグループが心を込めて作る、地域の旬の素材をふんだんに使った手料理が並びます。グループの中の一人、竹株喜志子(たけかぶ きしこ)さんは、2人の子どもを育て上げたお母さん。イベントなどで作ると、大人から小さなお子さんまで「おいしい」と好評とか。

「魚は何でもいいんですよ。もし臭みが気になるようだったら、ゆでる前に熱湯をさっとかけてみてください。みそは合わせみそ、魚のほかには白菜を入れます。ネギは大きめに切りますね」

井上さんが作る大敷汁は、野菜はネギとお好みでミョウガ。竹株さんはネギと白菜。また、家によっては大根を入れるところもあるとか。大枠は決まっていても、時と場合に応じ、また好みに合わせてそれぞれの家の味ができあがっていくのが、家庭料理の醍醐味です。漁師料理である大敷汁も家庭料理として浸透し、それぞれの家の味になっていったのですね。

 

栄養的にも保存食としても優れた伝統料理「ちゃつ」(朝日町)

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レンコンやニンジン、干しシイタケや油揚げ。さまざまな材料が入った朝日町の郷土料理「ちゃつ」は、彩りも美しく、小鉢に盛ると気の利いた一品になります。

「最近は機会が少なくなりましたが、かつては法事やお正月など、人が集まるときに作っていました。四日市では『煮あえ』と呼んでいます」と話すのは、郷土食を伝える活動をしているグループ、「Agriロマン四日市サルビア」の代表、岡本萬里子(おかもと まりこ)さん。今回はそのグループの中の一人、結婚を機に朝日町に住んで44年という伊藤洋子(いとう ようこ)さんを中心に、「ちゃつ」を作っていただきました。

四日市市に隣接する朝日町は、面積こそ小さいものの、名古屋までJRで35分と便利な町。海に面していないことから、野菜を使った「ちゃつ」が郷土の味になったのでしょう。「そもそも『ちゃつ』は底が少し高い、円形の朱塗りの木皿の名前です。その皿に盛りつけて提供していたのが、名前の由来といわれています」(伊藤さん)

【材料】(4人分)

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レンコン 170g
ニンジン 40g
干しシイタケ 大2枚
刻み昆布 15㎝程度
油揚げ 2枚

◇調味料(下味の分は除く)
砂糖 大さじ4
酢 150~180cc
酒、みりん 各大さじ1
塩 小さじ1/2
だし汁 300cc

<作り方>
1. レンコンは皮をむき、薄切りにして酢水に漬けてアクを抜きます。
2.他の材料をそれぞれ千切りにします。干しシイタケは水で戻した後、石づきを取って細切りに。刻み昆布も水に戻して食べやすい大きさに。「昔はだし昆布をはさみで細かく切っていたのよ」(伊藤さん)。油揚げは熱湯をかけ、油抜きして千切りに。ニンジンも千切りにします。

3.それぞれの材料を、別々に煮て下味を付けます。

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下味の味付けは、いずれの材料もだし汁と少し多めの砂糖、そして、少しの塩。薄味に仕立てます。レンコンはしゃきしゃき感を残すなど、それぞれの食感も大切に。

4.下味を付けたら冷まし、調味料であえます。

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右上はだし汁入りの調味料。砂糖が溶けるくらい煮立てて冷ましておきます。あえる前に材料をよく絞るのがポイント。

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最後に全体をよくあえてできあがり。
今回紹介した調味料の酒やみりん、塩、そしてだし汁の分量は、もともとは「適量」。郷土の味、家の味は、本来数字で表せるものではなく、母と娘、もしくは姑と嫁が一緒に作りながら、味覚を通して受け継がれていくものなのでしょう。

「2、3日置くと味がより染みて、酢の酸味もマイルドになります。保存できるのは1週間ほどですね。昔は梅干しを漬けたりする茶色の瓶に入れて保存し、冬場なら2、3週間はもっていました」(伊藤さん)。たしかに、お土産にいただいたちゃつを数日後に食べると、作った直後より味がまろやかになっていると感じました。

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Agriロマン四日市サルビアのみなさん(後列左が岡本さん、前列中央が伊藤さん)。さっぱりとしてほんのり甘い「ちゃつ」は、体の中がきれいになっていく、そんな味でした。ごちそうさまでした!

「昔の料理って、手間がかかるでしょう?」と、岡本さんは言います。でも、「ちゃつ」を口に入れると、一つ一つ味見をしていたお母さんたちの姿が浮かび、温かな気持ちに包まれます。また、てこね寿司と大敷汁を作ってくれた井上さんは、「コツなんてないほど簡単よ」と言いながら、随所でおいしく作るためのひと手間を加えていました。家庭の味が消え行く昨今、今回地元のお母さんたちが作ってくれた郷土料理は愛情たっぷりで、どこか懐かしく、やさしく心に染みました。三重という土地が育んだ郷土料理、早速私も作ってみます。

今回の取材先はコチラ

★農林水産技師女子会プロジェクト
三重県農林水産部の女性技術職員による自主研究グループで、農業・林業・水産業・畜産業など、各分野の専門知識・経験・能力に加えて、女性の視点や価値観を取り入れ、新たな取組や価値創造につながる活動をおこなっています。

★夢古道おわせ
住所:尾鷲市向井12-4
電話:0597-22-1124
営業時間:お母ちゃんのランチバイキング 11:00~14:00/夢古道の湯 10:00~21:30
駐車場:100台
http://yumekodo.jp/

★Agriロマン四日市サルビア
Agriロマン四日市サルビアをはじめ、県内各地域で活動しているAgriロマンのメンバーがクックパッドにて郷土料理などのレシピを紹介しています。『ちゃつ』も掲載していますので、ぜひ試しに作ってみてください。
クックパッド『Agriロマン三重 のキッチン』  https://cookpad.com/kitchen/22881094

Agriロマン四日市サルビア事務局(四日市鈴鹿地域農業改良普及センター)
住所:四日市市新正4-21-5
電話:059-352-0638

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