「起業希望者向け 三重で実現する一歩先の移住」ツアーレポート

2018.4.20

「日本のよさ」探し人 堀内みさ

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移住への第一歩を踏み出すために
土地を知り、地域の人たちと交流する
移住ツアーに参加しました

 「移住したい」と思ったことがありますか? 移住を考えるときに、まずぶつかる壁は、「何を生業にするか」ということ。さらに、「生活環境はどうか」「地域になじめるか」といった、さまざまな不安もつきものです。かくいう私も、10数年前に移住を経験。当時、同じような不安を抱いていました。
三重県では、移住希望者をサポートする体験・イベントとして、移住ツアーを実施しています。2018年3月初旬には、首都圏に住む人たちを対象に、移住後に起業を考えている人向けのツアーが行われました。同ツアーでは、三重南部に位置する尾鷲(おわせ)市、紀北(きほく)町、大台(おおだい)町、3つの地域を訪れ、それぞれの地で移住をサポートする職員や地域の人たち、さらに実際に移住し起業した人たちと交流ができました。もちろん、土地ならではのおいしい食べ物も盛りだくさん! 通常の観光ではなかなか体験できない、“ここに住んだなら…”を想定した移住ツアーをレポートします。※記事中の料金はすべて消費税込み

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尾鷲の活性化を担う集客交流施設「夢古道おわせ」を見学

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ツアーは、尾鷲市の「夢古道おわせ」での交流からスタート。地元のお母さんたちが作る郷土料理のランチバイキングと、海洋深層水のお風呂が楽しめる人気のスポットです。
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出迎えてくれたのは、「夢古道おわせ」の支配人・伊東将志(いとう まさし)さん。尾鷲市出身の伊東さんは、2007年、当時勤めていた尾鷲商工会議所から出向し、この「夢古道おわせ」の立ち上げに携わりました。現在は商工会議所を退職し、「夢古道おわせ」の支配人として運営に関わる一方、三重県南部5市町からなる東紀州地域の活性化にも精力的に取り組んでいます。

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まずは伊東さんを囲み、お互いの自己紹介から。今回の参加者は、大学生4人、社会人3人の計7人。ほとんどが三重県を訪れるのは初めてとのこと。参加の動機はさまざまながら、「知らない土地への興味」が根底にはあるようです。そんな彼らに、伊東さんは「この場所は尾鷲の集客交流施設として、年間約20万人が訪れます。でも、人口は減っている。町を活性化するにはどうしたらいいか、僕らなりにあがいています」と、率直に地域の現状を語ってくれました。

実は伊東さん、商工会議所時代、地域に関わる人材を育てる長期実践型インターンシップ事業の旗振り役をしていた人。移住希望者にとって、地域のために尽力する伊東さんのような人は、心強い存在となることでしょう。かつて私も、移住前に出会った地域の人たちに、いろいろと助けてもらったことを思い出しました。

 

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その後は「夢古道おわせ」の食事処でランチタイム。バイキング(通常1,200円)に並ぶのは、どれも「地域の皆さんが普段食べている料理」とか。サザエあり、ヒロメやアカモクといった珍しい海藻ありと、この土地ならではの食材が並びます。

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料理を作るのも配膳スタッフも、地域のお母さんたち。

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店内の一角には地元の新鮮な野菜や加工品も並びます。「ここでしか買えない、食べられない」へのこだわりが感じられます。そんなところからも、尾鷲の魅力が伝わってきました。

 

地域おこし協力隊が活躍する「おわせ暮らしサポートセンター」へ

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次に訪問したのは、尾鷲市の市街地にある「おわせ暮らしサポートセンター」。尾鷲市への移住や暮らしに関するサポートを行う事務所で、2017年3月に古民家を改装し開設されました。
同事務所では、現在、地域活性化のための活動に取り組むため、都市部などから移住してきた5人の地域おこし協力隊が、定住移住コンシェルジュとして移住希望者の相談に応じ、移住後の就労サポートをしています。また、空き家バンクの登録や利用相談のほか、イベントやセミナーなども開催。移住に関するさまざまな業務を行うことで、地域に貢献しています。

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「おわせ暮らしサポートセンター」に勤務する地域おこし協力隊のスタッフは、全員が移住者なのだそう。その中の一人、鈴木教平(すずき きょうへい)さんに、尾鷲市の移住事情をうかがいました。東京出身の鈴木さんは、不動産業勤務を経てベンチャー企業に転職。当時は毎日終電で帰る生活だったと振り返ります。「今は通勤時間4分。ストレスなしです」とのこと。
鈴木さんが協力隊員になったのは、2016年3月。お母さんが尾鷲市出身で、鈴木さんも小さい頃からたびたびこの地を訪れていたとか。とはいえ「なじみのない土地で地域おこし協力隊になる人も、実は多いんです」と鈴木さん。

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話は尾鷲市全般の説明から始まり、市のリーディング・カンパニーや実際の起業事例の紹介へ。中でも興味深かったのが、全国から漁師希望者を募り、実地研修を行う早田(はいだ)町の取り組み、「早田漁師塾」。漁師の後継者不足と、個人では漁師になりにくい現状、両者のニーズに合致するこの取り組みは、「ないからつくる」という発想から生まれたもの。起業する上でも、この発想は必要な気がしました。
また、地域おこし協力隊のサポートで販路が拡大され、注目を浴びるようになったという梶賀(かじか)町「梶賀のあぶり」の例のように、土地に脈々と伝わる良いものを全国に発信する橋渡し役になるようなビジネスも、展開可能かもしれません。

★つづきは三重で
三重県南部・尾鷲市で発見! 干物でも、燻製でもない、「梶賀(かじか)のあぶり」製造現場へ

一方で、土地の人々とのコミュニケーションについて、参加者から不安の声も。私自身、移住当初はコミュニケーションに悩みました。自分が感じた自然のすばらしさは、地域の人たちにとっては当たり前のこと。暮らし方も大きく違い、会話がなかなかかみ合わなかったのです。でも、あるとき、ふと気づきました。自分が大好きな土地に住めるのは、その地域の人々が脈々と日々の営みを続け、暮らしや文化を受け継いできてくれたから。「この地域のこと、教えてください」。そんな先人たちへの敬意の気持ちが大切なのだと思い返しました。

 

土地ならではの新鮮な海の幸を堪能しながら地域の人たちと交流

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夜は紀北町古里地区の「民宿桃太郎」で、地元の海の幸を食べながら、地域の人たちと懇親会。テーブルにはカツオづくしの3つの小鉢など、新鮮で多彩な味わいの料理が並びました。

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乾杯の音頭をとったのは、紀北町で主にウェブデザインを手がける株式会社「ディーグリーン」を起業した東城(ひがし じょう)さん。東さんはロンドン留学を経て、地元紀北町にUターンし、現在は地元の魚を使った離乳食の通信販売も手がけています。広い視野を手に入れた上で、地元で新しいことに挑むという生き方もあるのですね。

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懇親会には、紀北町の地域おこし協力隊で、移住窓口でもある塚越美奈子(つかこし みなこ)さんや、紀北町役場の皆さんも参加。「紀北町Love」の思いにあふれる皆さんのおかげで、参加者もすっかり打ち解けた表情に。自分が暮らす地域を愛し、活躍する先人たちの取り組みや生き方、考え方に触れることは、自分の生き方に思いがけないヒントを与えてくれるもの。そんな積み重ねが、自分なりの移住スタイルを生み出していく土台になるのかもしれません。

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懇親会では、塚越さんが取ってきてくれた珍しい甲殻類、カメノテも登場。海の岩場に生えているそうです。

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町役場からは、紀北町に関するパンフレットの配布も。「都会にないもの、なんでもあります」が、町のキャッチフレーズとか。町内を流れる銚子川は、日本屈指の透明度を誇る川で、近年、メディアでも注目されているそうです。

今回、紀北町の魅力を熱く語る人たちに触れ、移住への第1歩は、強く引かれる自然や人に出会うことから始まるのかもしれないと感じました。その想いが、起業する上でも心の支えになるのかもしれません。私自身、移住を決めたのは、何よりもその地の自然に強く惹かれたから。できるだけ長く滞在したい、そのために仕事をつくって暮らす─。そんな思考回路だったように思います。
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アウトドアイベントで地域の魅力発信に貢献する起業スタイルも

今回のツアー最後の目的地は、ユネスコエコパークの町、大台町。日本三大渓谷の1つ「大杉谷」があり、清流「宮川」が流れるこの町では、年に2度、「大台町アウトドアフェスティバル」が開催されています。このフェスティバルでは、地域の事業所の協力のもと、登山、トレイルランニング、森のようちえんなど、さまざまなアクティビティーが行われます。
★大台ヶ原・大峯山・大杉谷 ユネスコエコパーク http://ecopark.odai.or.jp/

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訪れたのは、まさにフェスティバルの日。会場となった奥伊勢フォレストピアの広々とした広場には、早くも参加者が集まっていました。

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オープニングセレモニーの司会進行を担当するのは、野田綾子(のだ あやこ)さん。野田さんは大台町観光協会とともに、このフェスティバルを主催する「Verde大台ツーリズム」の代表取締役を務めています。移住を機に大台町のアウトドア振興に携わり、2016年、三重県南部の地域の魅力を世界へ発信する団体として、このツーリズムを立ち上げました。大台町アウトドアフェスティバルも、アウトドアフィールドの魅力を多くの人に知ってもらいたいという想いいで始めたそうです。

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ツアー参加者は、フェスティバルのアクティビティーの1つ、キャンピングを体験。地域の家族連れに交じり、たき火を楽しむための火種づくりを行いました。

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実際に作業に入る前に、このアクティビティーの指導役、蕨野美幸(わらびの みゆき)さんが、たき火の実演をしてくれました。蕨野さんは、夫の祐樹(ゆうき)さんとともに夫婦で大杉谷林間キャンプ村の管理人をされています。祐樹さんは九州から、美幸さんは東北からの移住者で、この地の荒々しい岩場を持つ山に惹かれ、移住を決めたそう。

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早速、作業開始。まず、麻ひもを細かく裂いて、麻ボールを作ります。次に小枝を束ね、それを囲むように太い木を組みます。

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小枝の上に麻ボールを置いたら、準備OK。火を起こす道具、ファイアースターターで火種を麻ボールに落としたら火が着きます。

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最後は焼きバナナを作って終了。みんなとても楽しそう。大台町の自然の中で過ごした時間は、しっかり心に刻まれたことでしょう。

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昼は、自由時間。広場に出店している飲食・物販ブースを回ってみました。まずは人気の店「il Vivo(イル ビーヴォ)」で焼きたての石窯ピザを。キッチントレーラーにピザ窯を乗せて移動販売するこの店も、移住したご夫婦が経営されています。

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香ばしいピザは大人気。長い列ができていました。ちなみに写真のピザは「奥伊勢」。1ホール800円です。

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こちらは「宮川森林組合」が手がける「Odai products」。大台町に生育している樹木から抽出した天然成分100%のオイルや蒸留水が並びます。この地ならではのものづくりと洗練されたデザインセンス。アイデア次第で、豊かな自然がビジネスにつながる例だと思います。

最後に、今回のツアーの感想を参加者に聞いてみました。「人の温かさに触れられてうれしかった」「おいしいものを食べていろんな人の話を聞いて、いい体験ができたなと思います」と、それぞれ心の中に「何か」が残った様子。すぐには言葉にできないその「何か」が、次の扉を開けるきっかけになることでしょう。

「また次の機会に」。今回、何度もその言葉を地域の人たちから聞きました。もちろん土地の魅力は、一度の滞在でわかるものではありません。でも、この「一度」は、「知らない」とは大きく違います。次に訪れるときは、すでに知っている懐かしい風景や人に会えるのです。たしかに移住には、さまざまな不安がつきもの。でも、どこで暮らしていても、やはりその時々不安はあるものです。「自分が芯さえ持っていれば、前に進めるのかな」。尾鷲市の地域おこし協力隊の鈴木さんの言葉に、私も同感。あれこれ考える前に、自分の心に引っかかった土地、人と出会えたら、何度か足を運んでみるのもひとつの方法でしょう。今回の参加者が、心に残った「何か」を頼りに再びこの地を訪れ、次の扉を開ける日が来ることを願っています。

 

三重県では、移住をサポートするWebサイトを用意。さまざまな情報を発信しています。
Webサイト「ええとこやんか三重」
セミナーや体験・イベント情報のほか、仕事、住まいなどより具体的に、三重県への移住や生活をイメージできる情報がいっぱいです。http://www.ijyu.pref.mie.lg.jp/sp/
今回紹介した施設・スポットはこちら。
★夢古道おわせ
住所:尾鷲市向井12-4
電話:0597-22-1124
営業時間:お母ちゃんのランチバイキング 11:00~14:00/夢古道の湯 10:00~21:30
駐車場:100台
http://yumekodo.jp/
★おわせ暮らしサポートセンター
住所:尾鷲市朝日町10-19
電話:0597-37-4010
受付時間:9:00~18:00(月曜休)
http://owaseiju.wpblog.jp/
★奥伊勢フォレストピア
住所:多気郡大台町薗993
電話:0120-017-137/0598-76-1200
https://okuiseforestpia.com/

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つづきは大台町で

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