名張市の“えべっさん”は2月8日! 鼻かけえびすと、ユニークなえびす祭り

2018.2.8

グルメからエンタメまで 佐野 興平

七福神の舞_トリミング

えびす祭りには土地によって違いあり!

商売繁盛の祭りとして、私が住む関西地方でなじみ深いのが、通称「えべっさん」。兵庫県にある西宮神社をはじめ、毎年1月10日に「十日えびす」として行われることが多いのですが、事代主神(ことしろぬしのかみ)をまつる、三重県名張市の「蛭子(えびす)神社」では、「八日戎(えびす)」が、2月8日に催されます。えべっさんが2月!? 日にちが違うだけではなく、祭事の内容や授与されるものにも及んでいるとのこと。そこで両神社に足を運び、それぞれの祭りの内容、違いを調べてきました。さらに、志摩市にある「鼻かけえびす」という、レアな“えびす様”にも迫ります!

 

“えべっさん”は一人じゃない!?

まずは基礎知識から。関西で“えべっさん”と呼ばれる“えびす様”といえば、七福神の一員で、釣り竿と鯛を持ってニッコリと笑う姿が印象的。しかし、どの神様を“えびす様”と呼ぶのかは、さまざまな解釈があるって、知っていますか? 今回、話をうかがった名張市の蛭子神社は事代主神(ことしろぬしのかみ)ですが、西宮神社では蛭子神(ひるこのかみ)を、それぞれおまつりしているそう。というわけで、蛭子神社へ参りましょう!

 

【名張市・蛭子神社の場合】
七福神が町内を歩き、舞う“八日戎”

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画像提供:名張市観光協会

 

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第二次世界大戦でも空襲の被害にあうことなく、昔からの街並みが今も残る三重県名張市。市役所や近鉄名張駅からもほど近い場所に、蛭子神社はあります。

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蛭子神社の歴史やお祭りについて、責任総代の山村紀生(やまむら のりお)さんに教えてもらいました。

————こちらの神社は、いつごろからあるものですか?
山村さん「江戸時代にはあったようです。すぐ近くにある栄林寺に松尾芭蕉がお参りしたという記録が残っているのですが、そのとき、こちらにも来ていたようなので、300年以上の歴史があることになります」

————神社の源流はどこになるのでしょうか?
山村さん「島根県松江市にある美保(みほ)神社の分家になります。事代主神をおまつりしているので、関西のえびす神とは、また違うということになりますね」

————関西では十日えびすが一般的ですが、こちらは八日戎なんですね。
山村さん「以前は旧暦の1月8日に行われていましたが、それを新暦に直し、今は2月8日に祭りを行っています。前日の2月7日が宵宮(よいみや)で、午後3時ごろから祭典が行われたあと、七福神が舞を披露します。舞うのは地元の若い有志で作る『えびす会』のメンバー。舞のあとは七福神が町内を練り歩くんですよ」

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歌と三味線の音色に合わせて、舞が披露されるそう(画像提供:名張市観光協会)

————いつごろから行われているものですか?
山村さん「舞そのものは昔からあったようですが、大正時代のころは近くにあった『若葉亭』という置屋の芸姑さんたちが舞っていました。それが伊勢湾台風(昭和34年)で被害を受けてからしばらく中止されていて、昭和48年に復活。そのときから、七福神が舞うようになりました」

————ほかには、どんなことが行われますか?
「この祭りは、昔から“ハマグリ祭り”と呼ばれることがあるくらい、ハマグリがつきものです。そして、もう一つが植木。なぜハマグリと植木かというと、山と海の産物を、物々交換した市の名残からと、いわれています。だから祭りの日には通常の露店だけでなく、ハマグリと植木を売るお店が並ぶんですよ」

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祭り当日、露店で売られるハマグリ。町の八百屋さんにまでハマグリが並ぶという話も(画像提供:名張市観光協会)

—————ハマグリ入りの“粕汁”も振る舞われるとか?
山村さん「17年前から、観光協会が行っています。大鍋の600人分が、7日の午後1時30分から振る舞われます。ほかには青年部会の“ほろよい屋台”が、午後4時から始まります。ここではおでん、おすし、焼き肉などが提供されます」
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多くの人が楽しみにしているハマグリ入り粕汁(画像提供:名張市観光協会)

————2月8日の本祭は?
山村さん「午前8時ごろから、ネコヤナギの枝に大判や小判、福俵などの飾りをつけた吉兆を、参詣者に授与します。吉兆は“けっきょ”と呼ぶのですが、なぜそう呼ばれるかはわからないんです。午前10時ごろからは福娘も登場して『ようお参り』の声とともに、吉兆を渡していきます」

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▲吉兆がつけられたネコヤナギのほか熊手も(画像提供:名張市観光協会)

————関西では笹ですが、こちらはネコヤナギなんですね。
山村さん「隣の町内が“柳原”という地名であることからもわかるのですが、神社のすぐ裏に流れる名張川の河原に、ネコヤナギがたくさん生えていたんです。そして、ネコヤナギは初春に芽吹くので縁起がいいとされ、使われるようになったようです」

周辺の道路も車両通行止めにして行われるという“八日戎”は、冬の名張市随一のお祭り。毎年3万人を超える人出があり、大変なにぎわいを見せるそうです。七福神の舞、見てみたいですね!

【兵庫県西宮市・西宮神社の場合】
毎年約100万人を集める関西有数のえびす祭り

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全国に3,500ある「えびす神社」の総本社として知られるのが西宮神社。商売繁盛の神様として、多くの人の信仰を集めています。
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話を聞いたのは、権禰宜(ごんねぎ)の堀川利弘(ほりかわ としひろ)さん。なんと偶然にも、三重県伊賀市のご出身!

————“十日えびす”について教えてください。
堀川さん「1月10日が本えびす、前日の9日は宵えびす、11日は残り福になります。宵えびすのさらに前日にあたる8日には、昭和45年から続く『大まぐろ奉納』が、宵えびすには有馬温泉の繁栄を願って、運ばれてきた湯を湯もみしてから神前に供える「献湯式」も行なわれます」

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画像提供:西宮神社

————十日えびす自体は、いつごろから行われているのでしょうか?
堀川さん「原型になった祭りは、鎌倉時代あたりといわれていますが、正確にはわかりません。そして10日に行われるようになった理由も、実は、はっきりとは、わからないんです。ただ、元々“えびす様”というのは、市の守り神。昔は決まった日に市が立っていました。その年の最初に市が立つのが1月10日だったんじゃないかと。今でも当社では、毎月1日、10日、20日には、『旬祭(じゅんさい)』というものを行っています。あくまで想像ですけれど、それがかつて、市が立った日に当てられているのではないでしょうか。10日の本えびすでは、午前0時に全ての門を閉じて『居籠り(いごもり)』に入ります。そして午前4時から神事である『十日えびす大祭』が神職だけで行われ、午前6時に『開門神事福男選び』が始まります。原型は鎌倉時代にはあったと言われていて、今のような形になったのは明治時代くらいですね。福男の認定が始まったのは、昭和15年から。毎年約5,000人が参加しますが、スタート位置は前日に行われる抽選で決められるんですよ」

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画像提供:西宮神社

———— “福笹”の授与がありますが、由来などはあるのでしょうか?
堀川さん「神道では枯れない常緑樹を尊ぶ考えがあります。笹とよく似た竹も常緑樹のひとつですよね。そして、えびす様の釣り竿が竹であることや、竹のまっすぐと伸びていく姿が正直さを表しているなど、笹につながるいわれは、いくつかあるようです」

毎年3日間行われる「十日えびす」には、約100万人が訪れるというから驚きです。

志摩市の宇気比(うけひ)神社で発見!
鼻が欠けたえびす様と海に向かって大笑い

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志摩市浜島町にある宇気比神社の境内社となる恵比寿(えびす)神社には、鼻の欠けたえびす様がいるのです。これは浜島町が漁業の町であることが関係。というのも、競争で先頭に立つことを“端(ハナ)を取る”ということから、漁場で先陣を切れるようにと、漁師の人がえびす様の鼻(ハナ)を取るようになったとか。

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たしかに、しっかりと鼻が欠けています。
恵比寿神社でもう一つユニークなのが、毎年1月20日に行われる「初恵比寿祭」。祈祷(きとう)を受けた男女が、えびす様といっしょに海へ向かって三回大笑いし、一年の幸福を祈願するそうです。

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えびす様があるのは、宇気比神社の“鎮守の森”といわれる恵比寿が丘。ここから、えびす様はにこやかな表情で海を見つめ、航海の安全と幸を見守ってくれているように思えました。

 


「八日戎」を行う名張市の蛭子神社と「十日えびす」で知られる兵庫県の西宮神社、さらに志摩市に鎮座する「鼻欠けえびす」。それぞれのえびす様に歴史があり、おまつりにも違いのあることが興味深かった今回の取材。土地ごとに特徴のあるえびす様たち。みなさんの近くにもユニークなえびす様がいるかもしれませんよ。

今回紹介したのはこちら
★蛭子神社
住所:三重県名張市鍛冶町97
電話:0595-63-9087(名張市観光協会)。※2/3~9のみ0595-64-1000(蛭子神社)も応答あり
ホームページ:http://www.kankou-nabari.jp(名張市観光協会)
★西宮神社
住所:兵庫県西宮市社家町1-17
電話:0798-33-0321
ホームページ:http://nishinomiya-ebisu.com
★宇気比神社(鼻かけえびす)
住所:三重県志摩市浜島町浜島682
電話:0599-53-0088(宇気比神社)、0599-46-0570(志摩市観光協会)
ホームページ:https://www.kanko-shima.com(志摩市観光協会)

関連情報

つづきは名張市で 
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 ■観光三重 蛭子神社の八日戎
■伊勢志摩観光ナビ 宇気比神社