ハイレベルの伊勢茶で世界の人をほっこりと

2017.10.27

エンタメ&生活情報ライター 入谷晴美

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◆1杯の伊勢茶から知る
三重県の世界レベルの取り組み

三重県松阪市飯南(いいなん)町にある、日本茶カフェ「深緑茶房(しんりょくさぼう)」。懐かしさが漂うたたずまいは古民家風。ガラス窓の向こうに見える日本庭園をめでながら、一服のお茶と手作りスイーツをいただきました。※料金はすべて税込み。

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▲深緑茶房本店の茶カフェ。なごみの空間にずっと座っていたくなります。掘りごたつで足元もラクラク。

小さなポットのお湯、茶葉が入った急須と湯冷まし、かわいらしい湯のみに1分半の砂時計がワンセット。

熱いポットのお湯をまず、湯冷ましに移して砂時計を倒します。沸騰したお湯を80℃以下に冷ますことで茶葉の“渋み”がやわらぐのだそう。一煎目のお茶を湯のみに注ぐと、ふわりと緑茶の香りに包まれました。この一連の工程はゆっくりと。気持ちも落ち着いてくるようでまさに、ほっこり。4煎目ぐらいまでおいしく飲めて、少しずつ変わる味の違いも楽しめます。

 

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▲お茶は社名がついた「深緑」(480円)。スイーツは「しんさぼまんじゅう」(210円)。

現在、同社で販売されているお茶は25種類ほどですが、カフェでは「深緑」、「茶寿」(800円)、「千寿」(500円)の3種類が味わえます。専属パティシエが創作するスイーツには、どれにもお茶が使われ、ここでしか味わえない逸品ぞろいです。粉末茶入り、栗入りの2種類がセットになった「茶園ようかん」(210円)、茶の蜜をかけていただく「あんみつ」(650円)なども。

 

 

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▲深緑茶房本店。扉を開けた右側にカフェが続きます。

 

三重県の茶葉生産量は全国3位!

深緑茶房はカフェだけでなく、31ヘクタールある畑を持ち、茶葉の栽培から、自社工場で製品化までを行っています。茶畑のすぐそばに日本茶カフェがあるのは珍しいそうで、風景や匂い、雰囲気を含めて五感で味わうことができました。

名刺の肩書が『茶長』の松本浩さんは、「茶(ちゃ)長でも、社長でも、好きなように呼んで(笑)。会社として始めたのは平成11年(1999年)やけど、茶畑は昔からずっとあった。江戸時代の中期には年貢を茶葉で納めていたらしいね」と、とても気さくな方です。

 

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▲深緑茶房“茶長”こと社長の松本浩さん

三重県の茶葉生産量は静岡、鹿児島に次いで全国第3位。「明治より前は、静岡よりも多く作られていたよ。全国トップやね」と松本さん。ちなみに、宇治茶で知られる京都府は第5位です。

また、三重県産100%の緑茶の総称である「伊勢茶」には、“かぶせ茶”と“深蒸し煎茶”の製法があることも、教えてもらいました。かぶせ茶は、茶園の上に黒い覆いを“かぶせ”て直射日光を遮ることで、渋味の成分であるカテキンが生成しにくくなるそう。一方、深蒸し煎茶は、茶葉を蒸す時間を通常の3~5倍にすることで柔らかくなり、まろやかな味わいに。

県の北部では“かぶせ茶”が、南部は“深蒸し煎茶”が主に製造されているとのこと。山間に川が流れ、日中と夜間の温度差が大きい気候の松阪市飯南町は、昔からの茶どころで、“深蒸し煎茶”を製造しているそうです。同じ県内でお茶の製法が分かれるのも面白いですね。

 

 

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▲飯南町に広がる茶畑。このうち約31ヘクタールを深緑茶房が管理しています。

伊勢茶は葉肉が厚く、濃厚な味。かつては強かった渋味も、「長年いろいろと工夫され、1970年代には渋味が取り除かれているんです」と、松本さん。

同社では、伊勢茶の魅力を世界へ、との思いから、「2009(平成21)年に『JGAP(ジェイ・ギャップ)』、2016(平成28)年に『アジアGAP(当時のJGAPアドバンス)』認証農場となりました」と、松本さんは話します。

なお、GAP(Good Agricultural Practice:農業生産工程管理)とは、農業において、食品安全、環境保全、労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理の取り組みのこと。

詳細は、農林水産省HP内「農業生産工程管理(GAP)に関する情報」をどうぞ。

GAPの取得について、松本さんに話を聞くと、「農薬の使用量から資材の管理、清掃、生産や労務管理まで、毎日細かく記録し、スタッフの働きやすさにも配慮しています」。手間と時間がかかるだけでなく、GAP取得後は更新費用もかかり、経済的負担も小さくない、とも。

 

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▲深緑茶房の工場は、完全自動化。蒸す、もむ、乾燥、半仕上げまで、それぞれの制御盤からのデータが1台のパソコンにつながっています。3時間に1度、工場内を清掃し機械の点検も。

それでも松本さんは、「GAP取得のためにやり始めたことによって、これまでこんなに無駄なことやってたんかと気づいたことも多い。効率が良くなり安心、安全が認められるんやから、やる価値はあるね」と、メリットは大きかった様子。

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▲蒸した茶葉に風を当て、水気をとり冷却します。

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▲最終乾燥のひとつ手前の工程。精揉機(せいじゅうき)で熱を当てて乾かしながら、茶葉の形を整えます。

 

■東京オリンピック・パラリンピックでも三重県の食材を

三重県では、県の農産物・林産物のGAP取得を推奨しています。食品安全などを第三者が認証するGAPが、今後、生産者にとって販路拡大の条件となるのは必至。2020年の東京オリンピック・パラリンピックを一つの節目とし、三重の食材を世界に発信していきたいという県の思いがあるようです。

そこで、GAP取得の取り組みについて話をうかがうため、三重県の農林水産部フードイノベーション課を訪れました。

 

「昨年開催された伊勢志摩サミットでは、延べ269品目の県産食材が採用され、特に国際メディアセンターで出された食事では97%が県産となりました。これは、国が主催する会議では大変珍しいことです。松阪牛や伊勢えび、あわびだけではない、魅力的な食材が三重にはたくさんあると証明されたということです」と、同課プロモーション促進班の大迫慎太郎さんは語ります。

高級食材だけでなく、三重県には野菜、海産物など“前菜からデザートまで”をまかなえる多品種の食材がそろうとも。「2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録され、伊勢志摩サミットでは三重県の食がクローズアップされました。日本食への注目度が高まる中、東京オリンピック・パラリンピックで多くの食材を提供するためにも、生産者のGAP取得が大きなカギとなっています」と大迫さん。

というのも、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は、農産物や畜産物、木材、水産物の個別基準の要件をすでに設定。大迫さんによると、大会期間中、選手村や競技会場、プレスセンターではトータル約1500万食以上が必要と見込まれ、食材はGAP認証などが条件になるのだそう。

現在、県内では深緑茶房をはじめ23社(件)がGAP認定を取得。2019年度末までに70件まで増やしたいと言います。大迫さんは、「オリンピック・パラリンピックだけのことではなく、大手スーパーではGAPを取得したものだけを扱うようになるという話も出ています。将来的には取得が必須になるのでは」。

 

農林水産部フードイノベーション課プロモーション促進班の大迫新太郎さん(左)と班長の伊藤徹さん (2)

▲「三重ブランド」を推進する農林水産部フードイノベーション課の伊藤徹さん(写真右)、大迫慎太郎さん(同左)に話を聞きました。

また、今回クローズアップした伊勢茶は、松阪牛、伊勢えび、真珠などとともに、知事が認定する「三重ブランド」に名を連ねているそう。詳細は、「三重ブランド」ホームページで確認できますよ。

三重ブランドパンフ

▲三重ブランドのパンフレットもあります。

 

三重県庁の帰りに、津駅でちょっと寄り道をしました。深緑茶房は津駅ビル チャムに津支店があり、同社で人気の茶葉を厳選して販売しているのです。

津支店 店内

▲JGAP認定の伊勢茶を、手土産に買っていく人も多いそう。

店長の小林啓子さんは「駅ビルということで情報発信の意味合いが大きいですね。試飲もしていますので、気軽に立ち寄ってください」と笑顔で応対してくれました。

世界最大級の祭典、東京オリンピック・パラリンピック。三重県の食材が大会を支えていくのだと思えば、何だかロマンが広がります。選手や報道陣、大会関係者の皆さんが、ひとときでも伊勢茶でほっこりできますように。

 

今回紹介したお店はこちら。

★深緑茶房 本店 (産直茶販売店・茶カフェ)

住所:松阪市飯南町粥見4209-2

営業時間:売店 9:00~17:30/カフェ 10:00~16:00、水曜および12/31~1/3休み

 

★深緑茶房 津支店

住所:津市羽所町1191−1(津駅ビルチャム1階)

営業時間:8:00~20:00、定休日なし(1/1休み)

深緑茶房HP http://www.shinsabo.com/

関連情報
■つづきは松阪市で http://www.mie30.jp/area/matsusaka
■つづきは津市で http://www.mie30.jp/area/tsu