松阪で焼肉といえば、鶏肉らしい!? 松阪牛だけじゃない三重ミートの世界。

2017.2.10

「つづきは三重で」市民記者

魑・辟シ閧峨・邇牙沁雎・IMGP0576

【取材】kanzaki chiharu

「三重を代表するブランド牛は?」と尋ねたら、ほとんどの人が「松阪牛」と答えると思いますが・・・。

「松阪ってどこにあるかご存じですか?」
「松阪牛以外に、松阪には何がありますか? どんなイメージですか?」

と問いかけたら、答えられない人がグッと増えるのではないでしょうか。

実はコレ「三重県あるある」。

松阪牛しかり、伊勢神宮、熊野古道、鈴鹿サーキット、伊賀忍者しかり・・・。
有名コンテンツが強烈過ぎて、実は面白い地域文化が隠れがちなんです。

そのひとつが「松阪鶏焼き肉」。

松阪牛で有名な松阪の市民にとって「焼肉」と言えば、牛じゃなくて鶏らしいのです。

確かに松阪駅周辺を少し見回せば「若鶏 網焼き」「網焼き 鶏」の文字があちこちに・・・。

真相を確かめるべく、松阪鶏焼き肉をこよなく愛する団体「Do it! 松阪鶏焼き肉隊」の共同代表、森下桂子さんにお話を伺いました。

「自分たちでできる町おこし」をテーマに活動するDo it! 松阪鶏焼き肉隊の森下桂子代表
▲「自分たちでできる町おこし」をテーマに活動するDo it! 松阪鶏焼き肉隊の森下桂子代表


―――「松阪鶏焼き肉」の店はコンビニより多い!?

森下さん:松阪に住んでると「松阪牛をしょっちゅう食べられていいね」なんて言われますけど、そんなわけないですよ!! お正月とか、お客さまが来たときとか、特別なものです! ごちそうです。 庶民はもっぱら鶏焼き肉です。松阪市内、周辺を合わせると鶏をメインにしている焼肉店は28店くらいありますね。コンビニより多いかも(笑)。

―――焼き鳥じゃなくて「鶏焼き肉」?

森下さん:はい。串に刺して焼くのではなく、甘辛い味噌ダレを絡めた鶏肉を網で焼いて食べるスタイルです。もちろん牛肉の焼肉店もありますが、松阪には鶏を専門に扱うお店がいっぱいあって・・・。私たち地元の人間は物心ついたときからこの鶏焼き肉を食べているので、これが普通だと思っていたんです。でも県外に出た友人や、帰省で戻ってきた子から、よその地域には無いらしい・・・と聞いて「ご当地グルメ」であることに気付きました。鶏焼き肉

―――なぜ鶏肉?なぜ味噌ダレ?

森下さん:昭和の時代から、このあたりの農家では卵を産む鶏を飼っているところが多く、卵を産まなくなった鶏(廃鶏)をただ処分するのはもったいないと、各家庭で味噌ダレに絡めて網焼きにして食べていたようです。この習慣に目をつけて昭和40年代後半くらいから「鶏焼き肉」のお店が増え始めて、安くて美味しい鶏焼き肉はたちまち松阪のソウルフードになりました。松阪地方では100年以上前から「豆味噌(赤味噌)」を中心とした味付けが一般的だったこともあり、基本的にタレは赤味噌ベースです。

論より証拠! というわけで、創業40年の老舗「かしわの焼肉 トリユウ」さんへ案内していただきました。

松阪市上川町にある「トリユウ」。開店時間は11:30~20:00。月曜定休。
▲松阪市上川町にある「トリユウ」。開店時間は11:30~20:00。月曜定休。

「かしわの焼肉」・・・鶏焼き肉初体験の私にはもうそのフレーズが新鮮。
そして外にいても漂ってくる味噌ダレの美味しい香り。

トリユウ店内。

ワクワクしながら店内へ。趣きのある雰囲気、燻された壁のグラデーションに期待値はあがりっぱなし。
壁面のメニューに目をやると・・・安い!! そしてシンプル!トリユウメニュー。

鶏焼き肉のメニューの基本は若鶏・親鶏(ひね鶏)だそうです。

こちらのお店は、そのほかに肝、ササミ、皮、砂きも、くび肉、テールなど、種類が多いのが特徴。
赤味噌ベースに醤油、砂糖などをブレンドしたタレか、塩コショウで味わえます。

まずは基本の若鶏・親鶏をタレでオーダー。

トリユウ2代目店主・平岡千明さん(左)。
▲トリユウ2代目店主・平岡千明さん(左)。

おおおおおお! 生肉の上に味噌ダレがドバっとかかって出てくるんですね。
この状態ですでにタレの香りにやられます。味噌ダレドバババッ。

生粋の松阪っ子、森下さんが手慣れた様子で、鶏肉をタレにからめて、次々に焼いてくれます。
たっぷりの味噌ダレがジュっと炙られ、鶏肉に焦げ目がついたら周囲はあっという間に香ばしい煙でモクモク。
まだひと口も食べてませんが、「とりあえずビール!」と叫びたくなる衝動。

代表自ら焼いていただく

良い色に焼きあがったら、念願の「いただきます!」

若鶏はやわらかくジューシー。親鶏は独特の歯ごたえと噛めば噛むほどに味があって、それぞれに個性を発揮。甘辛い味噌ダレの味が脳に刻まれてクセになる。
そのうえ、パクっと食べやすいひと口大の鶏肉が、やめられない♪ とまらない♪

美味しい!

「白いご飯くださーい!!」

白いご飯のせ

白米最高!!! 合わないわけがない。
タレのからんだ鶏肉ひと切れで、何杯でもいけそうな勢いです。
ちなみに、トリユウさんのご飯は地元農家さんが育てた三重県産コシヒカリを自家製米したもの。
こういうこだわりもうれしいですね。

部位の説明 他にも美味しい料理が。

調子に乗って、肝、皮、くび肉、テール・・・と、どんどん注文。
シメは肉団子と卵が入った「とり汁」をペロリ!

あぁ、美味しい。
「これはクセになる。なんで今まで知らなかったんだろう。また食べに来たい」
とつぶやく私に、森下さんが「そこなんです!」とにっこり。

 

―――「松阪鶏焼き肉」で町おこし

森下さんが野林拓朗さんと共同代表を務める「Do it! 松阪鶏焼き肉隊」は、鶏肉店主の組合でもなければ、行政でもなく、地元の若者が「松阪市を盛り上げよう」と2010年に発足した一般市民の団体(現在はNPO法人。15人が所属)。

「自分たちでできる町おこし」をテーマに活動する中で、目をつけたのが松阪のソウルフード「鶏焼き肉」。

地元の人にとっては当たり前でも、実は外に知られていない「鶏焼き肉」の魅力を日本全国に発信することで、もっと松阪に足を運んでもらい、松阪の魅力を知ってもらえるきっかけづくりになれば・・・と考えたそう。
ちなみに森下さんの普段のお仕事は看護師さんで、仕事の合間をぬってこの活動をしているのです。

「最初はどこにも相手されず苦労しました」と森下さん。「今後は鶏焼き肉以外の分野でも松阪の魅力を発信したい」とも。
▲「最初はどこにも相手されず苦労しました」と森下さん。「今後は鶏焼き肉以外の分野でも松阪の魅力を発信したい」とも。

B-1グランプリをはじめ地方での食イベントへの出展や、協力店を募っての「松阪鶏焼き肉とりとりマップ」の発行、鶏焼き肉ダレの商品開発など、試行錯誤しながら活動を続けてきた甲斐もあり、年々協力店も増え、行政のバックアップも得られるようになったといいます。

松阪鶏焼き肉の店を紹介した「とりとりマップ」(右)。相可高校食物調理クラブの生徒と一緒に開発した松阪鶏焼き肉のタレ(左)は三重県内のスーパーなどで購入可能。
▲松阪鶏焼き肉の店を紹介した「とりとりマップ」(右)。相可高校食物調理クラブの生徒と一緒に開発した松阪鶏焼き肉のタレ(左)は三重県内のスーパーなどで購入可能。

「Do it!松阪鶏焼き肉隊」による【松阪鶏焼き肉の定義】

①味噌ダレであること

②あみ焼きであること

③鶏焼き肉を専門においていること(メニューの最初が鶏肉であること)

―――いろんな松阪の魅力を見てもらいたい!

森下さん:店によってタレの味が違うので、気分や好みで使い分けたり、週に何度も食べられるのが鶏焼き肉の良さ。夜よりも、お昼から家族や友人と気軽に集う場所ですね。テイクアウトもできますよ。最近ではお店のタイプもバリエーションが豊かになり、地元松阪の錦爽鶏(きんそうどり)を使っていたり、備長炭で焼いたり、おしゃれな居酒屋っぽいお店も増えてきました。同じ店をリピートするのも良し、いろんなお店で食べ比べるのも良しで、何度も松阪に足を運んでもらえたらうれしい。松阪は城下町もありますし、松阪木綿やお茶など特産品もいろいろ。松阪牛はもちろん、いろんな松阪を見てもらいたいです。


―――三重には美味しい豚肉も!

なるほど牛もいいけど、鶏もいい!
・・・と思っていたら、なんと三重には希少豚肉も存在するらしい。

その名も「玉城豚(たまきぶた)」。

昨年の伊勢志摩サミットのワーキングランチで各国首脳にも提供され、注目を集めたブランド豚肉で、その名前の由来にもなっている度会郡玉城町でこだわりの飼育方法により育てられています。

―――新鮮で安全、希少な玉城豚

玉城豚(写真=玉城町養豚組合提供)
▲玉城豚(写真=玉城町養豚組合提供)

平坦な土壌が広がり、豊かな自然と澄んだ水、そして温暖な気候に恵まれた玉城町。
古くから稲作をはじめ、多彩な農作物の産地として栄え、畜産業も盛んな地域です。
その玉城町で養豚農家が協力しあい、40年もの年月をかけて品質を高めてきたのが「玉城豚」です。

特徴のひとつは、独自配合の餌。
飼料米、トウモロコシや大豆かすなど、自分たちで把握できる安全で安心できる素材を使い「おいしい豚肉」をめざして試行錯誤を繰り返したオリジナルブレンドの餌を使用。

衛生、温度管理が徹底された玉城豚の豚舎(写真=玉城町養豚組合提供)
▲衛生、温度管理が徹底された玉城豚の豚舎(写真=玉城町養豚組合提供)

また、なるべくストレスなく豚を育てるために、衛生管理、温度管理を徹底した環境のもと、健康に育てられているのも特徴です。

玉城町から出荷される豚は年間2万頭ですが「玉城豚」ブランドとして販売されるのは年間1300~1500頭程度。
というのも、玉城豚が購入できるのは、玉城町の農家と、玉城町養豚組合が運営する「ふるさと味工房アグリ」のみ。
特に上質な豚を厳選し、新鮮なうちに店内で整形し、玉城豚として販売しています。

 

玉城町で育った安全で新鮮な農畜産物をそのまま届けることをキャッチフレーズに設立された「ふるさと味工房アグリ」。
▲玉城町で育った安全で新鮮な農畜産物をそのまま届けることをキャッチフレーズに設立された「ふるさと味工房アグリ」。

―――生産者も精肉処理の現場も見える「玉城豚」

ふるさと味工房アグリの中にある「農産物とれたて市場」。
館内には玉城町の農家で収穫された朝採れ野菜や加工品、そして玉城豚の精肉や加工品がズラリ。

館内にある「手づくりハム工房」で加工された玉城豚のハムやソーセージ。
▲館内にある「手づくりハム工房」で加工された玉城豚のハムやソーセージ。
玉城町で採れた四季折々の農産物はすべて生産者の顔が分かるものばかり。
▲玉城町で採れた四季折々の農産物はすべて生産者の顔が分かるものばかり。

玉城豚は生産者が市場に出荷した翌日には枝肉でアグリへ届けられ、館内の精肉処理施設で整形して販売されます。驚きなのはガラス越しに枝肉を整形する様子が見られるところ。
これぞまさに、鮮度の証であり、目に見える安心。
整形されたお肉に慣れている私たちにとっては、命を頂いていることを実感する食育の場かもしれません。

玉城豚 玉城豚

このように、小規模な加工場で職人さんが丁寧に精肉加工するため、年間出荷量が限られるわけです。玉城豚

ジューシーで臭みがなく、脂の甘味が印象的な玉城豚は、館内のレストランで食べることもできます。
生産者の皆さん、そしてアグリの広報担当、名張司さんも口をそろえて「塩、コショウなど、シンプルな味付けで肉そのものの味を感じてほしい」と話します。

「玉城町の味を求めてお越しください。お待ちしています!」と、広報担当の名張さん。
▲「玉城町の味を求めてお越しください。お待ちしています!」と、広報担当の名張さん。

玉城豚加工品 玉城豚加工品

ブランド豚としてさらなる付加価値を持たせるために「熟成肉」の製品化にも取り組んでいるという玉城町養豚組合の皆さん。
生産者のたゆまぬ努力で培われてきた玉城豚を求める人たちで、この日も小さな町は賑わっていました。

養豚組合メンバー28年度現在
▲玉城町養豚組合の皆さん。

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ふるさと味工房アグリ

住所:三重県度会郡玉城町原42541

TEL:0596-58-8686

ホームページ:http://www.amigo2.ne.jp/~act-farm/

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―――牛だけじゃない三重のミート力

牛に加えて、鶏、豚と3拍子そろう三重の肉文化ってすごい!!

松阪鶏焼き肉しかり、玉城豚しかり。

その地域に根差した食文化は一歩外に出ると知られていないものも多く、だからこそ、その食文化が成り立つまでの背景を知る楽しさ、その地域へ行って体感できる喜びがあることが分かりました。

伊勢赤鶏、熊野地鶏、伊賀牛・・・。まだまだある三重ミートの世界、もっと知りたくなりました。

 


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